ベルンです。


今週月曜日、プロフェッショナル仕事の流儀で、フランスで活躍する日本人テーラーの鈴木健二郎氏が取り上げられていました。


近しい職種なのでもちろん見させていただきました。


なにより、地上波でこのように服飾の仕事を取り上げてくれることが本当に嬉しいかぎりです。



日本ではどうしても、イギリス、イタリア、アメリカの三本柱が基本のため、フランスのファッションはほとんど見かけません。


フランスファッションといえばレディースのメゾンが大勢力。

メンズファッションなんて日本にはほとんど届いてきていません。


スーツの世界一はイギリスとほとんどの方が言いますが、フランスだと言う人もいます。


それは、国別でスーツの捉え方が違うからでしょう。



スーツの発祥であるイギリスでは、スーツの元の姿をできる限りそのままに、軍服からの香りを消さないスーツ作りをしています。

そのため、ブリティッシュスーツには威厳を感じるのです。

イタリアでは、より着心地を最優先し、堅苦しくなく、よりソフトなスーツ作りを徹底し、今のような肩の力の抜けたスタイルが完成しました。

あまり日の目を見ないフランススーツですが、世界で一番高級なスーツを作るのはフランス、とも言われています。


イギリスのサヴィルロウ、イタリアのサルトで作っても30万ほどから始まりますが、フランスの一流テーラーにお願いすると、平気で80万など、規格外の価格帯を提示してきます。


それは、フランスのスーツがどこよりも、着るものというウェアとしての役割ではなく、工芸品、またはアートのような扱いをしているからだと思うのです。


美的感覚が素晴らしい彼らだからこそ、他のヨーロッパにはない、美しさの追求、

それをスーツにも求めているのでしょう。



番組内での鈴木氏のスタイルを見ていても、イギリス風でもイタリア風でもない着こなし。


日本人には新鮮に見える、美しい柄選びのコーディネート。


色や柄の計算など、教科書には書いていないような応用だらけの組み合わせ。

しかしそれが自然としっくりきてしまい、そしてそれが美しさを倍加させているのです。



日本人もこういった教科書通りではない着こなしができる人がもっと増えてほしい。


それがわたしの仕事でもあるのですが。


そもそも日本という国は、世界で一番スーツ着用率の多い国。


いわば国民服となっているわけです。


総人口に届けるものとなれば、必然的にクオリティは落ちてしまいます。



こんなにも既製スーツが世に出回っている国も他にありません。


そもそもスーツという言葉が同じだけで、捉え方がまったく違うのです。



唯一の着られるアート。


そんな捉え方でスーツを見てみると、何十万という物も、決して高い買い物ではないのではないでしょうか。


アジア同士で肩を並べて戦っているのではなく、

もっと上流を目指してヨーロッパとのセンスのせめぎ合いをするべきだと思います。



日本だけで認められて生きていくのは、さして難しいことではないはずです。


お金を稼ぐ以上の幸せは、そんなところにあるような気がします。




ベルンでした。