インタビュー タクーン・パニクガル





アジアのデザイナーが世界で活躍するために必要なこととは?


インターナショナル・ウールマーク・プライズ (International Woolmark Prize)2014-2015アジア地区大会」、虎ノ門ヒルズのアンダーズ東京で行われ、タクーン(Thakoon)のオーナー兼デザイナーであるタクーン・パニクガルが審査員として来日した。タイ出身。アメリカで育ち、デザイナーになる前にはエディターやライターの仕事も経験しているタクーンにアジアのデザイナーが世界で活躍するためのポイントなどを聞いた。



三宅一生や高田賢三、山本耀司、川久保玲などの日本人デザイナーはもちろん、デビュー20年を迎えるタクーンさんなど、アジアのデザイナーが世界で活躍しているケースはたくさんありますし、世界に進出したいという若手デザイナーも多いと思います。アジアのデザイナーが世界で成功するために必要なことは?


「グローバルなトレンドを理解することが一番必要だと思う。アジアのデザイナーはどうしても自分の国のローカルなマーケットだけを見てしまいがちで、世界のマーケットで何が起きているのか、何が求められているのかということに対する理解が不足している部分がある。


世界で成功したいのなら、ベースになるニューヨーク、パリ、ミラノ、ロンドンなどの都市で、自分のブランドのお客さまになる人は誰なのか、何を求めているのかを知ること。ストアレベルで何が起きているのかをしっかりと理解しなければいけない。


トレンドといっても、プレスのレベル、つまり、雑誌やメディアでコレクション情報やトレンドを知るだけではだめだ。実際にそれぞれの国のお店、消費者のレベルで何が本当に売れているのか、買っているのはどういう人なのかを知り、お店からいろいろいなことを吸収しなければいけない」



昔と違い、インターネットやSNSの発展によって、コレクションで発表した作品がライブで配信されたり、数時間後には世界中に知られてしまうようになりました。デザイナーに求められることは変わりましたか。


「インターネットやSNSによって、ファッションについても消費者はより進化しているし、洗練されている。進化した消費者に受け入れられ、買ってもらうためには、これまで以上に情熱が必要だし、自分が何を考えて作っているのかを見せていかなければいけなくなっている。


ただ単に、世界に出してみたい、有名になりたいという程度ではうまくいかない。自分のオリジナリティや創造性、デザインのプロセスを持った上で、それをきちんと表現していくことができることが必要になっている」



中国や日本、タイ、シンガポール、香港など、アジアでもたくさんの国がファッションウィークを開催し、アジアにおけるファッションのハブになることを目指しています。


「まず、指摘したいのは、デザイナーもファッションウィークも多すぎるということ。それが激しい競争を作り出している。その中で成功するには、それぞれのデザイナーやファッションウィークがアイデンティティに基づいて、自分らしさや本当に伝えたいものを明確にする必要がある。


たとえば、タイのデザイナーであればタイらしさや、タイのデザイナーとしてのアイデンティティはどこにあるのか、それを世界でどう表現し、抜きんでていくためには何をするべきなのかを考えるべきだ。自分らしさに基づいて、ニッチや美学を確立し、服を作らなければいけない。


もちろん、日本のデザイナーも同じ。本当に世界て成功したいなら、日本のデザインとは何なのかということからきちんと考えなければいけないし、それが世界での競争に勝ち抜くための方法、成功するための処方箋になると思う。


というのも、これから世界に出て行こうとするデザイナーは世界のビッグブランドや有名デザイナーとの競争だけでなく、大量生産によって低価格なファッションを作るような企業との戦いにも勝ち抜いていかなければいけないからだ。もちろん、自分の国をそのまま出せばいいというわけではないが、自分らしさと独自性を持っていなければ成功はおぼつかない」



自身のブランドだけでなく、2009年からはTASAKIのクリエイティブディレクターなども務めていますが、今後やりたいことは。


「アジアの国々や人々が私に関心を持ち、尊敬してくれているのは、私がアジアのデザイナーであり、クオリティを重視しているからだと思っている。これからもアジアのコミュニティの一員としてのさまざまな活動を続けていきたいし、デザイナーとして新しい才能の発掘や育成にもできるかぎり協力していきたい。


もちろん、タクーンブランドとしても、これまでの成功に満足せず、さらにステップアップしていきたいと考えている。すでにアクセサリー分野など周辺商品も拡大しているが、もうすぐブランドとしてのマイルストーン(20年)に達するし、今後も単なる服や単なるデザインを越えて、ブランドをさらに育てていきたい」










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