今映画になりまくりの荒井晴彦の脚本、3ヶ月連続で新作が封切られまくる廣木隆一が監督する『さよなら歌舞伎町』を観た。
「グランドホテル形式」と言うか、アルトマンの『ナッシュビル』や『ショートカッツ』を思わせるスリリングな群像劇。荒井さんは『ナッシュビル』の緻密な群像劇は当然周到な脚本に基づいたものと思っていたのに、アルトマンの即興演出であることを知ってショックを受けたとの事だった。そして本作は荒井晴彦の緻密な脚本によって織り上げられた群像劇になるのだが、ここで深く考えてみれば、現場ではなく原稿用紙の上だけで、人の出し入れを矛盾なく設計することこそ至難の技であり、見事と言うしかない。
本作は、さらに廣木隆一の軽やかでポップな演出も相俟って素晴らしい傑作現像劇となっている。青山真治の美学でも、安藤尋のニュートラルな長回しでも、根岸吉太郎の手堅い演出でもなく、ポップな廣木演出が成功している。
荒井さんは「神様ではなくバカ様な観客を泣かせる感動の映画なんて」とうそぶいていたけれど、僕はこの映画を観て、揺さぶられる感情、こみ上げてくる涙を必死でこらえながら映画を見つめていた。今までの荒井映画とは異なる新しいテイストに酔いしれた。
イ・ヘナ、河井青葉、我妻三輪子、樋井明日香による裸を辞さない体当たりの熱演が素晴らしく、脱がない前田敦子がアンバランスなまで凡庸にしか映っていないことだけが傷になっている。松重豊と南果歩による逃亡劇の軽やかさもまた魅力的だった。【大傑作必見の映画です】
http://www.sayonara-kabukicho.com
http://youtu.be/cpx8V6wP9dk
1/30に『映画芸術』ベストテン&ワーストテン号が発売になりました。
3年ぶりに選者に復帰しました。
僕のベストテン&ワーストテンは下記の通りです。
よろしければお買い求め頂き、選評を約2500字執筆していますので、お読み下さい。
お買い求めは下記リンクにてamazonからも、
あるいは、紀伊國屋、ジュンク堂など大型書店にて販売されます。
ベストテン
配点
10点 海を感じる時
10点 小さいおうち
9点 抱きしめたい - 真実の物語 -
8点 愛の渦
7点 Seventh Code セブンス・コード
4点 わたしのハワイ
3点 ぼくたちの家族
2点 0.5ミリ
1点 麦子さんと
1点 超能力研究部の3人
ワーストテン
配点
-10点 永遠の0
-10点 そこのみにて光かがやく
-10点 私の男
-7点 クローバー
-7点 渇き
-7点 友達と歩こう
-2点 小さいおうち
-1点 蜩の記
-1点 2つ目の窓
映画芸術 2015年 02 月号 [雑誌]/編集プロダクション映芸

¥1,585
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9/14(日)に僕が企画制作したライブ・コンサートを京都大原で開催します。
是非ご来場下さい。

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Music Apied in 京都 大原
よしだよしこ & Rachel Faro 2014.9.14

料 金:4000円(1ドリンク&キッシュ付き)
日 時:2014年9月14日(日)
     13:00 開場
     14:00 開演
場 所:Book & Cafe Apied
     京都市左京区大原大長瀬267
     京都バス「大原」停より徒歩10分
     京都バス大原行きは、京都駅・国際会館前・出町柳駅より乗車

予約・問合せ先:farlongest@icloud.com

http://apied-kyoto.com/cafe.php
http://music-apied.blogspot.jp
https://www.facebook.com/music.apied



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僕が、よしだよしこさんの唄を初めて聞いたのは、2006年5月、毎年大阪服部緑地公園で行われている「祝春一番コンサート」のステージだった。1972年にピピ&コットのメンバーとしてELECレコードよりデビューしていた彼女のことを僕は知らないままでいたのである。
彼女のように美しくギターやダルシマを弾く日本の女性ミュージシャンに出会ったのは初めてだったし、彼女の唄う歌の素晴らしさにも打たれた。なかでもザ・バンドのレパートリーの中でも僕が一番好きだった「Night They Drove Dixie Down」を日本語で唄っていること、そして歌詞の意味も知らずに聞いていたこの歌の、辛辣な意味が的確に唄われていることに、打ちのめされたのです。
以来、彼女が関西でライブをする度に聞きに行き、アルバムを買うようになった。ザ・バンドのみならず、ボビー・チャールズの「Small Town Talk」、ジョニ・ミッチェルの「A Case Of You」、CCRの「Who'll Stop the Rain」、これらもまた彼女による的確な日本語詞と見事なギター・プレイで聴かせる。トラディショナル・ソングの「The Water Is Wide」もまた同様だし、高田渡さんの「私は私よ」や休みの国の「追放の歌」など、他のフォークシンガーの歌たちも、彼女が唄えば新たな息吹を得る。
彼女自身のオリジナルソングもまた広い題材を取り上げていて素晴らしい。1960年代の黒人公民権運動のエポックとなった黒人女性ローザ・パークスを取り上げた「She Said No!」のような歌もあれば、高田渡さんのことを歌った「ア・シ・オ・ト」や、日常の一コマを描いた女性らしい歌もある。
現在、全国津々浦々、年間100回以上のステージに立ち続けられるのも、彼女の奥深い音楽性と洞察力に裏打ちされてのことだと言える。
そんな彼女も、ピピ&コット解散後、ソロ活動、1976年からは約1年間のアメリカ放浪を経て、音楽活動を23年間も中断していた。高田渡さんの勧めもあって1999年にシンガーソングライターとしての活動を再開し、2003年初のソロアルバムのリリースを皮切りにアルバムをリリースし続け、今年も6枚目となる新作アルバム「唄って笑って」を出したばかりである。

そして今回、共演するレイチェル・ファーロ(Rachel Faro)さんは、2009年と2010年にも来日して、よしだよしこさんとライブツアーを行っており、今回が3度めの来日ツアーになる。彼女が1970年代にリリースした ファースト・アルバム「Refugees」(1974年)、セカンド・アルバム「Rachel Faro II」(1975年)は、いずれもジョン・サイモンによってプロデュースされ、ボニー・レイット、マイケル・ブレッカーら、あるいはエリック・ワイズバーグらのバッキングを得て、高い評価を得ていた。ジョン・サイモンもまた、 サイモンとガーファンクル、ザ・バンド、ジャニス・ジョップリン、マイケル・ブレッカー、佐野元春などのプロデューサーとして、そしてまたシンガー・ソングライターして名を知られており、僕のようなウッドストック音楽の信奉者としては、彼のプロデュースを受けたこと自体によって、彼女を伝説として心に刻んできていた。
彼女もまた1980年代以降には、音楽活動としては映画音楽を手がけたり、もっぱら音楽プロデューサーとしてアルバム制作を続けてはいたが、長らく表舞台には立ってはいなかった。しかし2009年には自身のプロデュースで3枚目のアルバムをリリースし、来日も果たすなど、再び歌い始めているのである。
京都大原の初秋の風のなかで彼女らの唄と出会って頂きたい。