今映画になりまくりの荒井晴彦の脚本、3ヶ月連続で新作が封切られまくる廣木隆一が監督する『さよなら歌舞伎町』を観た。
「グランドホテル形式」と言うか、アルトマンの『ナッシュビル』や『ショートカッツ』を思わせるスリリングな群像劇。荒井さんは『ナッシュビル』の緻密な群像劇は当然周到な脚本に基づいたものと思っていたのに、アルトマンの即興演出であることを知ってショックを受けたとの事だった。そして本作は荒井晴彦の緻密な脚本によって織り上げられた群像劇になるのだが、ここで深く考えてみれば、現場ではなく原稿用紙の上だけで、人の出し入れを矛盾なく設計することこそ至難の技であり、見事と言うしかない。
本作は、さらに廣木隆一の軽やかでポップな演出も相俟って素晴らしい傑作現像劇となっている。青山真治の美学でも、安藤尋のニュートラルな長回しでも、根岸吉太郎の手堅い演出でもなく、ポップな廣木演出が成功している。
荒井さんは「神様ではなくバカ様な観客を泣かせる感動の映画なんて」とうそぶいていたけれど、僕はこの映画を観て、揺さぶられる感情、こみ上げてくる涙を必死でこらえながら映画を見つめていた。今までの荒井映画とは異なる新しいテイストに酔いしれた。
イ・ヘナ、河井青葉、我妻三輪子、樋井明日香による裸を辞さない体当たりの熱演が素晴らしく、脱がない前田敦子がアンバランスなまで凡庸にしか映っていないことだけが傷になっている。松重豊と南果歩による逃亡劇の軽やかさもまた魅力的だった。【大傑作必見の映画です】
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