『劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』を観た。
入江悠はすごい。『TV版神聖かまってちゃん』では、松江哲明がひたすらビデオカメラを通じたコミュニケーションのみに確信を持ち、音楽の力に確信を持たないので、『ライブテープ』同様、音楽の力は表層的となり、失敗作だった。しかし入江は「音楽の力」と「劇映画のドラマトゥルギー」への確信に満ちている故に、奇跡に満ちた映画を生み出す。昼夜働くシングルマザーとパソコンおたくの保育園児、進学校からドロップアウトしてプロ棋士を目指す女子高生とひきこもりの兄と両親の葛藤、メジャーデビューにあたって新路線を打ち出そうとするレコード会社プロデューサーと葛藤するマネージャー、これらの物語が語られながらも、メンバーの中でボーカルの「の子」だけが不在のまま映画は進む。ラストに「の子」がステージに登場し歌うと同時に、すべての物語が転回する。劇的であることとロックであることの見事な邂逅である。リリカルな大傑作である。





今どき稀有な反骨ぶりもいい。