弾鉄さんのブログに笠原和夫さんのこと が書かれていた。最初はコメントで返そうと思ったんだけれど書き始めたら長くなってきたので、記事にします。

初めて笠原さんのことを知ったのは大学に入って映画を見始めた頃、深作監督「仁義なき戦い」の脚本家としてだった。その頃は今と違ってシナリオが出版されることは少なかったのに4部作が一冊の本として出版されたのを貪るように読んだ。書きながら落涙してしまうと言う笠原さんのパッションと、完璧なまでの論理性を備えたそのシナリオは、できあがった映画の素晴らしさとを納得させるものでもあった。飯干晃一の原作もあったけれど、笠原さん独自の徹底的な取材によって完成されたものであった。実録路線ではこの4部作と「県警対組織暴力」「やくざの墓場」と言う傑作を書いただけで、それ以外の多くの作品は他の人に継承されたものであった。

その次に笠原さんのことを意識したのはマキノ雅弘さんの映画を意識しだしてからである。大学時代良く新世界の映画館などで任侠映画とかを適当に見ていたのだが、その中で明確に素晴らしさが際だつ映画があった。クレジットを見ると必ず、笠原さんの脚本でマキノさんの監督なのである。マキノさんは本当のヤクザを撮るのはあまり好きではなくて、任侠映画と言いながら、実はほとんどはイナセな仕事のお兄さん方が主役である。鳶、板前、魚河岸、テキヤ、こんな職業の人たちが、明治・大正の時代、資本家の台頭により、資本家のバックがついた新興勢力が彼らの仕事を金と策略で奪おうとする、共同体的結束を持った主役たちは苦しめられ、ついに堪忍袋の緒が切れて、立ち上がるというストーリーで、その時代の共同体VS資本の対決というロジックが完璧に活劇として破綻なく描かれているのは、必ず笠原脚本の作品であり、一部破綻していたら共同脚本、そんなロジック抜きでマキノさん的情感の見せ場が続くが、話のつじつまがあっていない時は笠原さんが脚本を書いていなかった時だった。

また、笠原脚本でマキノさんではなく山下耕作さん監督の「博奕打ち 総長賭博」と言う映画があり、三島由紀夫も絶賛した大傑作と呼ばれていたのだが、見そびれてなかなか見ていなかったのだが、やっと見た時には、驚愕した。本当にすごい映画だったのだ。笠原さんの張りつめた論理が一分の隙もなく組み立てられ、鶴田浩二演じる主人公は、任侠道に忠実であろうとするばかりに、どうしようもない悲劇的状況に追い込まれて行き、そして激しい悲しみに突き落とされながら、最後の殴り込みへと突き進んでいく。まるでギリシア悲劇のような古典的で完璧な物語に打ちのめされずにいられない。三島由紀夫が驚嘆するのも当然なのであるが、その物語が鶴田浩二らのストイックで端正な芝居と、山下監督の美学的なかっちりした演出と言うアンサンブルが見る者に、張りつめたような緊張を強いるのです。一つの映画の傑作の形として極北に位置する映画なのです。


笠原 和夫, スガ 秀実, 荒井 晴彦
昭和の劇―映画脚本家・笠原和夫
笠原 和夫
仁義なき戦い―仁義なき戦い・広島死闘篇・代理戦争・頂上作戦
笠原 和夫
「仁義なき戦い」調査・取材録集成
socho
東映ビデオ
博奕打ち 総長賭博
東映
日本侠客伝 BOX


1964.03.01 人生劇場 新・飛車角  東映東京
1964.08.13 日本侠客伝  東映京都
1965.01.03 顔役  東映東京
1965.01.30 日本侠客伝 浪花篇  東映京都
1965.08.12 日本侠客伝 関東篇  東映京都
1966.02.03 日本侠客伝 血斗神田祭り  東映京都
1966.03.19 日本大侠客  東映京都
1966.09.17 日本侠客伝 雷門の決斗  東映京都
1967.02.25 懲役十八年  東映京都
1967.09.15 日本侠客伝 斬り込み  東映京都
1968.01.14 博奕打ち 総長賭博  東映京都
1969.10.01 緋牡丹博徒 鉄火場列伝  東映京都

1969.10.15 日本暗殺秘録  東映京都
1970.02.21 玄海遊侠伝 破れかぶれ  大映京都

1972.03.04 関東緋桜一家  東映京都
1973.01.13 仁義なき戦い  東映京都
1973.04.28 仁義なき戦い 広島死闘篇  東映京都
1973.09.25 仁義なき戦い 代理戦争  東映京都
1974.01.15 仁義なき戦い 頂上作戦  東映京都
1974.09.14 あゝ決戦航空隊  東映京都
1975.04.26 県警対組織暴力  東映京都
1976.10.30 やくざの墓場 くちなしの花  東映京都
1989.06.17 226  フィーチャーフィルムエンタープライズ
1990.08.18 浪人街  山田洋行ライトヴィジョン=松竹=日本テレ...
1980.08.02 二百三高地  東映東京
1982.08.07 大日本帝国  東映東京