「やっぱり切ろうか」

医師のその一言で保存的療法で始まった腹部内の壊死した組織と膿の排出も一週間で頓挫した。

「膿が溜まっている内部のポケットが広い。どこまで壊死し、膿が溜まっているのか。このままでは一向に内部の肉は盛り上がってこない」

このままでは溜まった腹内の膿は充分に除去出来ないとの判断に。

もう半年間で三度開いた腹部だ。

あと一度開いたところで、もはや大したもんじゃない。

もう気持ちの中ではそう割り切った。

いやきっとそうなるだろうと予感していた。

午前中にCTで腹部の膿が溜まる空間を把握し、どこまでの範囲に及んでいるのかを確認。

午後から切開に入る。

手術を受けるために向かうのは、嫌なもんだ。

今回はもちろん全身麻酔ではない。

意識がある中での開腹手術だ。

手術を行う部屋に向かうと、受付では既に医師が待機しているとのこと。
若干緊張しながら指定された部屋に向かう。

その部屋の前で待ち、看護師から入るよう促された

部屋に入ると手術担当医師から説明が入る。


「思った以上に膿の溜まって感染した空間が広く、このままでは内部空間が壊死した細胞があるために健康な肉が出来ません。つまり腹部内部は治ってこない。」

「そのため不本意ではありますが、中央の開腹している傷口を内部が掃除出来るように更に開きます」

「それと人工肛門があった右下腹部もメスで開きます。そしてその両方から腹部内部の掃除を出来るようにします」

つまりは長方形の隙間(空間)の両端部の腹の肉を切って、両方からアプローチ出来るようにしたいようだ。

見た目では分からないが、内部の空間は縦・横10㎝ぐらいの隙間がある。

更に医師からの説明は続く。

「あとこれでもまだ内部の肉がくっつかないようなら、もう一度手術をして開く必要が出ることもあります。
あくまで可能性ですが」


その可能性が一番怖い。

可能性の話をすると、自身の中での確率がぐっと上がる。
どうせなら一度で切り開いたほうがましだ。

また開かれていく開腹部に苦笑いが込み上げる。

こうして再度回復して閉じていた、また閉じようとしていた傷口を開いた。

1ヶ月での退院予定も未定に変わった。