退院が近くなった。

そう感じていた。だけどやはり裏切られる。

まあそうだよな。何も最初から期待しなければ、裏切られることもない。

生易しいわけがない。

ただ期待なんて最初からしていないから、受け入れることが出来る。

ネガティブでもそれが最善だ。



人工肛門を閉じた右腹部下部の皮膚下の腹膜周囲で細菌感染を起こして、膿が溜まるポケットを形成した。

つまりは術後感染を起こした右腹部内部は治ってなどいなかった。
内部の感染により壊死した細胞は膿と化して、膿苔になり腹部内部にへばりついているようだ。

開腹した手術の傷口を綺麗にするため必死で洗い続けていた。
だが皮肉にも皮膚表面の傷口が治り続けたおかげで、内部に溜まった膿の唯一の逃げ場を塞ごうとしていたのだ。

このままでは‘’膿瘍‘’

また医師から聞いた言葉は前回と同じ内容だ。

1.管で膿を抜くか。
2.一度塞がった開腹の傷を切開し、膿を抜くか。
3.根気強く指三本程度が入る腹部内部にガーゼを入れて、膿を吸わせ続け自然と治るのを待つか。


もう管を入れるのは嫌だ。
治ってきた傷口をまたメスを入れて開きたくなどない。
根気強くガーゼを腹部内部に入れ続け、治るのを待つ保存的療法を選択する。


先生に治る期間を聞こうと思い、止めた。

すぐに答えは出たからだ。



「1ヶ月ほどの予定で様子を見ていきましょう」




まあいいさ。

治るのであれば、もう何も文句なんてない。

ただ家族への負担が増え続けることだけが、堪らなく嫌なだけなんだ。

それだけなんだよ。