絶え間ない痛みが続く。それも激痛。
例えるなら腹部に向け並べた剣山を二人がかりの大人が全力で突き刺そうとしている感じ。
少しでも腹部に入れた力を抜けば、ヌプヌプと突き刺さっていくような。

全身から冷や汗がびっしょりと出るような状況だが出ていない。
そんな中モニターを見ていた看護師の方が、その部屋に来た別の看護師に
家族の方を連れてきて下さいと伝える。

今から家族の方がこられますからね。
という言葉と共に、うちの嫁が入ってきた。

目に入った夫のただならぬ表情に声を掛け辛そうにしている。
大丈夫?といえそうにない苦悶に満ちた表情に見えているのだろう。
そんな中、「手術後すぐなので、痛みが強いので硬膜外麻酔を早送りしますね」と看護師が点滴スタンドにぶらさげた、いくつかの容器に手をかける。
カチッという音と共に、背中に冷たいものが流れる。

あぁ、これで少し喋れるかも、、、
なんて思ったら、全く痛みが変わらない。

嫁が「痛み、ましになった?」と聞いてくる。
大丈夫だよ、安心していいよと言ってあげたいのに、あまりの痛みに言えない。
受け答えすることすら、億劫な痛みが突き抜ける。
かろうじて「痛い、、ものすごく痛みがある、、何が起こってるのかわからない、、」

本当は落ち着かせて安心させてあげたかったのに、逆に不安にさせてしまった。
それに手術が上手くいったのかも聴きたかったのに、聴けなかった。
情けないことに激痛でそれ以外のことが考えれない。

嫁さんも不安な顔がより一層広がる。
ただその時は手術時にもうひとつ不安材料を抱えたまま終わったとは思っていなかった。
純粋に手術後の状況を心配している顔だと思っていた。

そんなやり取りもつかの間で、嫁さんに看護師さんが近寄り「ではまた明日は昼の13時から集中治療室に入ることが出来ますので、、」と声を掛けられた。
嫁さんが私に顔を向け、「また明日来るね、、頑張って、、」と部屋から出ていった。

ただそれを気にする余裕がない痛みが襲いつづける。
正直舐めていた、我慢出来ると思っていた自分なら。痛みに強いと思っていた。
でも我慢出来ない。

集中治療室で気付いてから、1時間と経っていない。
看護師さんに先ほどの麻酔が全く効いていないことを伝える。
すると麻酔科の先生に相談するから待って下さいと言われた。

もう本当に待てない。一刻の余裕がないくらい痛い。
しばらくすると麻酔科の先生が来て、看護師に何かを伝える。
少し離れていて、よく聴こえないが二人の看護師の方が近付き、点滴スタンドに取り付けた注射器がセットされた機械に何かするようだ。
そのセットされた注射器にはテープに手書きでフェンタニルと書かれている。
また機械には2mlと表示されている。

二人の看護師が共に確認するように、「2ml、確認、投与」と言って機械を操作するとピリリリという音と共に全身の痛みが急激に引いた。

まるでなかったかのように、ただ痛いと感じていた部分は分かるんだが、痛みを感じない。
その部分は麻痺した感覚になった。
その代わりに水の中を1日泳いだ後、心地よい眠気が襲ってきてるような恍惚とした気持ちよさまで感じる。

これで大丈夫だ、、と安堵した。
そして時計を見ると午後8時を回ったとこだった。
周りを見渡す余裕が出来て、ベッドの足先に置かれた机やモニターに表示されたものが気になる。
モニターにはどうやら血圧や血圧内の酸素量などか表示されているようだ。
ドラマでもよく見るバイタルというものらしい。

手首に針が刺さっている腕を見ようと、少し動かした。
するとバイタルのモニターがけたたましいアラーム音を鳴らす。
何事か!?と思い、そちらを見ると上から2つ目の数値が68やら80等を行き来している。
この後知ったのだが、血圧の上の値らしい。

すぐに看護師さんが確認しに来ると、手首に針と管が入った腕の位置を調節する。
すると警告音が止まった。

それを見て、ほっとしたのも束の間、また激痛が始まった。。。。



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なかなか長くなってしまいますね。
実際にあった感じたことを忠実に書いています。
これを見て、自分はこんな感じだった等コメントいただけるとありがたかったりします。
まだ闘病中ではありますが、頑張って更新していきたいと思います。