センス・オブ・ワンダー | アジアの宙にのって

センス・オブ・ワンダー



先日、
ある関係で私は環境問題の古典「沈黙の春」に出逢いました。



著者として知られるレイチェル・カーソンは、
1964年4月14日、ワシントンの郊外シルヴァースプリングで死去しました。



彼女は、幼いときから将来は作家になることを夢見、大学院の時、あこがれの海と出会い、海に生きる生物たちと強い絆で結ばれ、海洋生物学者としての道を選びました。



彼女は政府広報物に自然保護地域のレポートを書いたりする中で、たまたま書いた「われらをめぐる海」というベストセラー作品を生み出しました。



『海の作家』
才能が認められた彼女は文筆業に専念しました。



そんな最中、彼女は一通の手紙をうけとりました。

当時、アメリカでは、化学物質がつぎつぎと開発され、その危険性についてはあまり知られることなく、実用化が進んでました。



大量生産、大量使用されるDDTなどの殺虫剤。
「沈黙の春」は、
危険な科学物質の実態を告発するものでした。
この出版はアメリカ社会をゆりうごかし、危険な殺虫剤の使用に歯止めをかけることになりました。



『人間という一族が、おそるべき力を手に入れて、自然を変えようとしている。』
「沈黙の春」第二章の冒頭の一節です。



「おそるべき力」というのは、原子力と化学物質のことです。
いずれも第二次世界大戦のなかで、「化学戦のおとし子」として世に出たものです。



この「おそるべき力」を人間はうまくコントロールしていけるのか、化学物質の汚染の影響は最後は人間に及ぶ。



『人間も自然の一部にすぎない。
私たちの世界は、すみずみまで汚染している。
人間だけ安全地帯へ逃げ込めるだろうか。』



彼女の鋭い疑問でした。

とくに重大なことは、個体としての人間が汚染されるのにとどまらず、遺伝子の損傷により人類そのものの未来が危機に瀕することになりかねないとのこと。



私たちは、いまや分れ道にいる。
この分れ道を行くときにこそ、私たちの地球を守れる、最後の、唯一のチャンスがあると彼女は言う。





彼女は死後「センス・オブ・ワンダー」の著者としても
名前を残しました。



「センス・オブ・ワンダー」は、
最初はある雑誌に掲載されたものですが、彼女の死後、あらためて出版されたものです。

いわば彼女の最後のメッセージです。



この作品は、子供を育てる事になった彼女が、子供と森や海で自然体験を共にした内容のエッセーです。



「子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、
驚きと感激にみちあふれている。



残念なことに、わたしたちの多くは大人になるまえに澄みきった洞察力や、
美しいもの、畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。



もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない<センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目をみはる感性>を授けてほしいとたのむでしょう。



地球の美しさと神秘を感じとれる人は、科学者であろうとなかろうと、人生に飽きて疲れたり、孤独にさいなまれることはないでしょう。」



きっとそんな子供達が大人になれば、
いつまでも、
この地球の自然を愛し、守る為の努力を怠らないのだろうなぁと、私は思いました。



そして、そんな子供達の成長に、私達大人が自然界の美しさ・大切さを教えていかなければと、思いました。




レイチェル・カーソン


私達の住む地球のダイナミックな自然を理解し、生命への畏敬と慈愛を持ち、化学物質による自然の破壊と生命への危険を私達に警告した、




人類の恩人の一人。


そう思えます。




                                    紫