「優しくついた嘘」
「優しくついた嘘」
母が家の中であれば
まだギリギリ歩く事が出来る
そんな頃の話です
あまり傘を持ち歩かない私は
先輩からその事を指摘され
折り畳みの傘を買いました
そして結構な雨が降っていたある日
帰宅の電車から降りて
カバンから傘を出しながら
改札を出ようとした時
家でしか歩けないはずの母が
改札を出たところに
私の大きな傘を持って
立っているのです
私は慌てて傘をカバンに入れて
「ありがとう傘を持ってなくて
濡れてしまうところだった」
優しくついた嘘でした…
母の気持ちを
1ミリも無駄にしたくない
そして20歩ぐらい歩くと
休憩してしまう 母にあわせて
ゆっくり歩く 私の傘の下は
涙の雨で びしょ濡れでした…
にこにこ・・・・・