帰り道


帰りの、発車前のバスの中。
真っ暗になった窓の外を見遣る。


密かに想いを寄せる人が
こちらに向かって歩いてくる。

『2人きりになれる…‼︎』
喜びと、緊張と。
複雑な想いが 胸を跳ねる。


何を話そう?どんな話が出来るかな?
そんな想いを乗せたまま、
バスが動き出す。


バスを降りてからが勝負。
偶然を装って、声を掛けてー。




…そうするつもりだった。

だけど彼は、私に気付いた様子もなく
先へ先へと歩いてゆく。


徐々に広がる距離。
今の私たちを表しているようで。


心に残る緊張感を恨み、
まだ不調な左脚を もどかしく思う。

背中を向けて 先を行く彼を見送る。

次に こういったチャンスは
無いかも知れない。


でも、この気持ちは
視線だけでは伝えられない。

色々と話して、一緒の時間を共有して。
そこから全てが始まる。



躊躇いと緊張の殻を破って
次こそは彼と一緒に話をしたい。


そして、いつか伝えたいー
『貴方が好きです』
と。