先に断っておきます。
タイトルがちょっとアレですが、
制限をかけなければならないような表現は一切入っておりません。


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痛くも甘い時間


旅を続けるサトシたちは、
4日後に控えるセレナのトライポカロンデビューを応援するため、とある森で野営していた。


初めてのトライポカロンで優勝するため、セレナは1ヶ月前からフォッコと特訓をしていた。
食べる時間を惜しみ、ろくに食事をとることもせず、特訓に励んだ。


そして今日も、朝食も程々にスポーツウェアに着替え、さっそく野営地から10分ほど離れた秘密の特訓場所に向かった。


秘密の特訓場所には綺麗な花が咲き誇り、
練習を頑張るセレナとフォッコのやる気を起こさせた。


「フォッコ、出ておいで‼︎」

ボールを高らかに投げ、最愛のパートナーを外に出してやる。

「フォッコ!」

「今日も張り切って特訓するわよ‼︎♫」

「フォッコ‼︎」

セレナが右手を挙げてそう言うと、
フォッコも真似をして 小さな手を挙げて元気に返事をする。


「(トライポカロンはポケモンだけじゃなくて、私たちトレーナーもパフォーマンス力を上げなくては駄目。
だから私も、もっとダンスを練習しなくちゃ…‼︎
本番まであと4日、それまでに最高のコンディションに持っていかなきゃ!)」


心の中でそう呟き、自分を奮い立たせる。


「さぁ、特訓開始よ‼︎」

特訓を開始してから3時間。
セレナはその間、一切休まずにダンスの練習に励んだ。

少々息が上がってきたが、そんなことにも構わず、自分の思う『最高のパフォーマンス』が出来るまで踊り続けた。


「まだまだ…‼︎
 これじゃあ、エルさんと戦える程のレベルに到達していないわ。
もう一度‼︎」


ミュージックプレイヤーで音楽を再生し、
セレナは再び踊り始めた。


「ここはもっと力強く!
足に力を入れて…‼︎」



その瞬間、右膝から変な音が聞こえ、
急に力が抜けたような感覚に陥った。
それから考える間もなく、気付けば地面に尻もちをついていた。


何が起こったのかー。
素早く思考を巡らせ、行き着いた結果は…









「(私、骨折したの…⁉︎
       どうしよう、本番は4日後なの     に…‼︎)」


恐る恐る無事だった左足に力を入れ、両手を地面について立ち上がろうと試みる。


何とか立てた。
骨折ではなかったようだ。

では、右膝に感じる この違和感の正体はー?

こんな事は初めての経験だったので、
セレナには自分の右膝に何が起こっているのかを分かるはずがなかった。


「(とりあえず、みんなの所に戻りましょう。)」


「フォッコ…?」


気付けばフォッコが側に来ており、心配そうにセレナを見つめていた。

「心配かけてごめんね。大丈夫よ!


そう言って、セレナはサトシたちが居る野営地に戻ろうと 歩き始めようとするがー



「痛ッ…‼︎」

右膝には痛みとまでは言えないような違和感。
強力なバネに押し返されている感覚といえば良いか。
とにかく、右膝が思うように動かず、
彼女に歩くことを億劫にさせた。

かと言って、ここから野営地までは約10分。
大声を上げて助けを呼んでも聞こえるはずがない。
また、フォッコに誰かを呼びに行って貰っても良いが、ここに来るまで彼女はボールの中にいたため、道が分からない。

どちらにしろ、セレナが自力で戻るしかなかった。

側にはフォッコが居たが、思うように歩けないということが 彼女に孤独感を与えた。
しかし、ここで泣いている場合ではない。
泣きたくなる気持ちを堪え、地面に落ちていた手頃な木の枝を杖にして ゆっくりと歩き始めた。


杖を頼りに歩いたとしても、一歩を踏み出すのに なかなか時間が掛かった。

途中には、普段なら何ともないような石の階段。
それが、今の彼女にとっては とてつもなく長く感じた。

一段一段に両足を置き、また一段と降りてゆく。
出来るものなら淡々と降りて行きたいが、
そうはできない現実。


上手く歩けないという辛さを何とか乗り越え、セレナは野営地に戻った。



杖をつき、とてつもない疲労感に襲われたセレナの姿を見て驚かなかった者は誰一人いない。


「…セレナ…‼︎ どうしたんだ⁉︎」
「何があったの…?」
「よろしければ、詳しく教えて頂けませんか…?」



セレナは絶望感で泣きたいのを堪え、
先ほどの一部始終を皆に話した。



「そうだったのか…  今も痛むのか?
早く手当てしよう!」
「ユリーカも手伝う‼︎」
「頑張りすぎたのかもしれませんね…
今はゆっくり休んで下さい!」


「皆…迷惑を掛けてごめんね。」


「迷惑な訳ないだろ! 傷付いた仲間を助けるのは当然だぜ‼︎」
「いつもセレナに色々とやってもらってるから、今度はユリーカに恩返しさせて♫
「さぁさぁ、ケガ人さんは座っていて下さい!」


「ありがとう…!」



早急に脚の手当てを受け、あまり歩かないようにと念を押されたセレナは 皆の言葉に甘えて大人しくしていた。

どうしても歩かなければならない時は仲間の肩を借り、欲しいものがある時は持ってきてもらった。


セレナの世話はサトシが進んで行ってくれた。
分からない事はシトロンに質問し、セレナの右膝が早く良くなるようにと手当てしてくれた。

セレナの気持ちを知ってか、シトロンは頑張るサトシのサポート役に徹した。




次の日の夜。
右膝の変な違和感が治ったため、セレナは少しだけダンスの練習をしようと立ち上がった。

皆はもう寝ているはずだし大丈夫、と辺りを軽く見渡し、秘密の特訓場所へ行こうとした その時ー





「セレナ‼︎」

驚いて後ろを振り向くと、そこにはサトシの姿。

「サトシ…?」

「何処に行くんだ?」


彼の表情は『セレナの考えはお見通し』と言いたげだった。
しかし


「なかなか眠れないから、この近くを散歩しようと思って!」

嘘を付いて引きつりそうになる顔を、静かに微笑んで誤魔化す。


サトシの顔は 今度は呆れ顔になり、
「本当はダンスの練習に行こうとしてるんだろ?」


そう言いながら、サトシがセレナとの離れた距離を徐々に詰める。


「…。サトシにはお見通しなのね。
膝も良くなったし、私のダンスパフォーマンスもまだまだだから 少しでも練習しようと思って。
本格的に練習出来るのは、あと1日しかないし…」


「仮に今練習して、また膝を痛めたらどうするんだ?
もしそうなったら、トライポカロンにすら出られなくなるかも知れないだろ?」

「それは…」

ここで、2人の距離は 互いの息遣いが聞こえるほど近くなった。

セレナの、高鳴る胸の鼓動も聞こえてしまいそうだ。


「…頼むから、もう無理はしないでくれ…」


静かな、掠れた声でサトシが呟き
セレナの方に倒れこんでくるー



「(こっ、これって…‼︎)」


胸の高鳴りが最高潮に達し、
そして驚きすぎて、自分にもたれるサトシの身体を引き離すことが出来なかった。

いや、寧ろ このままの方が嬉しいのだが。


この、夢にまで見たロマンチックなひと時を過ごすこと、実に2分。
ようやく落ち着いたセレナは、冷静さを取り戻した。
そして、恋に鈍感な筈のサトシにしては違和感がありすぎるこの行為に疑問を感じ、
静かに声を掛ける。


「サトシ…?」

「…。」


返事がない。


もう一度、先ほどよりも大きな声で呼びかけてみたが、やはり返事がない。


仕方がないので、静かにサトシの身体を自分から離そうとするとー



「zzz...」


サトシは静かに寝息を立てていた。



これでようやく分かった。
サトシはセレナを抱きしめたのではなく、
眠気に耐えられず、結果的にセレナにもたれかかることになったのだ。


彼は セレナの世話をするため、慣れないことを一生懸命に頑張った。
それで疲労が蓄積したが、シトロンの警告にも構わず、ひたすらセレナのサポートをした。


それから、先ほどの出来事。
今すぐにでも寝たい気持ちを押し切り、
セレナに無理をさせてはならないと 彼女を止めに行ったのだ。
そして、もう少しという所でスイッチが切れ、途中で眠りに落ちてしまった。



「ふふっ…」

サトシらしくて、思わずセレナは笑ってしまった。
少し残念だったが、自分を心配してくれるサトシの気持ちが何より嬉しかった。

今はサトシにとって、私はただの友達だけど いつかは絶対にー





トライポカロン当日。
セレナの右膝はすっかり良くなり、最高のコンディションだった。

カロスクイーン・エルと戦うには、5回ほど勝ち抜かなくてはならない。

どこまで行けるかは分からないけど、
1ヶ月間の自分の頑張りを信じて、そして
皆への恩返しが出来るようにー



『エントリーナンバー2番、セレナさん&フォッコ! お願いします‼︎』


セレナの闘いが今、始まるー‼︎


                               (Fin.)




最近、2、3個ほど小説ネタを考えていたのですが 話が進まなかったので書けないでいました。

しかし、昨日、私自身に起こったハプニングのお陰で こんなサトセレ小説が書けました音譜
(私が負傷したのは左膝ですが)

いかがでしたか


タイトルの『痛くも』は勿論、セレナの右膝の負傷を意味し、『甘い時間』はサトシに抱きしめられたという(実際は違う)ラブ・ハプニングを指していますキラキラキラキラ

セレナは抱きしめられたのではなく、
サトシが睡魔に負けて もたれかかっただけだという、彼女にとっては何とも残念なシーンは、我ながら上手く考えたなと思いました


ところで、アニポケでも10月中に セレナはエルさんに会うようですが、どんな感じなのか非常に楽しみですラブラブ