2022年7月のMVP | 銀玉戦士のアトリエ

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☆2022年7月 月間MVP☆

 

👑🇦🇺アレクサンダー・ヴォルカノフスキー🇦🇺👑(UFCフェザー級王者)

 

【UFC276 VSマックス・ホロウェイ戦 dif5R判定勝利】

 

 

現UFCフェザー級王者、アレクサンダー・ヴォルカノフスキーが、前王者マックス・ホロウェイを挑戦者に迎え入れての3度目の対決に挑む。通算4度目の防衛戦で今後こそ完全決着なるか。

 

 

1R、両者オーソドックスに構える。

王者ヴォルカノフスキーは下がりながら左回りにサークリングし、前手を伸ばしてホロウェイに距離を詰めさせないよう立ち回る。

挑戦者ホロウェイはスイッチと踏み込みのフェイントを交えながら、左回りのヴォルカノフスキーを追っていく。ホロウェイが得意とするボクシングの距離まで詰めていきたいところだ。

ホロウェイが左ジャブを放つが、左回りのフットワークで外してゆくヴォルカノフスキー。ヴォルカノフスキーが左にサークリングする事で、ホロウェイとしては左ジャブが当たりにくい。

ヴォルカノフスキーが右ストレートを当てるが、ホロウェイも右のローキックをヒットさせる。

ヴォルカノフスキーの右フックと、ホロウェイのテンカオが相打ちする。

ヴォルカノフスキーが左ジャブを当てると、すかさず首相撲でホロウェイの首をロックして右のショートフックを当て、離れ際に右→左とヒットさせる。

ラウンド終盤、ヴォルカノフスキーが左ジャブを当てた後、やや前のめりに放っていったホロウェイの右ストレートをスウェーバックでかわし、リターンでワンツーをヒットさせる。

1Rは下がりながらも要所要所で印象に残るパンチを当てていった王者ヴォルカノフスキーのラウンドだ。

 

2Rも、左回りにサークリングするヴォルカノフスキー。

インローを当て、ホロウェイの右をダッキングでかわした後に、右ストレートをヒットさせる。

ヴォルカノフスキーの巧妙なフットワークとポジショニングに、得意のボクシングの攻防においても劣勢に立たされているホロウェイ。

ホロウェイは首相撲で組んで右フックを当てるが、ヴォルカノフスキーはすかさず体位を入れ替えて胴クラッチを取り、ケージに押し付けて右のエルボーを2発当てて離れる。

更にワンツーから相手の打撃をヘッドスリップで避け、左サイドに回りながら右フックをヒットさせるヴォルカノフスキー。

ホロウェイは左リードジャブを当てて試合を作っていき、尻上がりに連打で畳み掛けるのが必勝パターンだが、ヴォルカノフスキーの左回りのサークリングによりジャブが届かず、反対にヴォルカノフスキーの左ジャブがホロウェイの顔面を次々と捉え、ホロウェイは顔面から出血が見られている。

身長ではヴォルカノフスキーが劣るものの、リーチでは実はヴォルカノフスキーのほうが6cm長い。この意外な高リーチも、ヴォルカノフスキーの打撃がヒットする要因の一つだ。

 

3Rも同様に、左にサークリングするヴォルカノフスキーを追うホロウェイの顔面に的確に左ジャブを当ててゆくヴォルカノフスキー。

左右のローキックで脚にダメージを与える事も忘れず、コンビネーションを打った後は組んでケージに押し付け、膝、離れ際のバックエルボーをヒットさせる。

ヴォルカノフスキーはラグビー、レスリングをバックボーンとしているだけあって、四つ組みの攻防には絶対の自信を持つ。

打撃、組みの全局面で挑戦者ホロウェイを上回った感のある王者ヴォルカノフスキー。

最後は右ハイキックをガードのうえに当て、右ストレートを当ててラウンドを終える。

 

4Rも同じく王者ヴォルカノフスキーが下がりながらの左ジャブ、カウンター、組んでのクリンチ打撃とケージレスリングで試合を一方的に支配していく。

ホロウェイは右ミドルを放つが、これを2度キャッチするヴォルカノフスキー。

今回のヴォルカノフスキーのように左回りにサークリングする相手には有効な技だが、それすらも王者は巧妙に封じ込めてゆく。

5R、セコンドに「MMAを忘れるな」と言われ、組んでテイクダウンを狙ってゆくホロウェイだが、フィジカルで勝るヴォルカノフスキーに逆に体位を入れ替えられ、組み際の右エルボーからワンツーをヒットさせられる。

正確無比なジャブ、ワンツー、左右のローキックに加え、左フックと左ハイキックで攻撃を散らしてヒットさせてゆく王者ヴォルカノフスキー。

タイトルマッチの舞台で3度に渡って戦った両者。ホロウェイは昨年1月のカルヴィン・ケイター戦でケイターを終始圧倒し「僕がUFCで一番のボクサーだ!」と試合中にアピールしていたが、そのホロウェイの攻撃的なボクシングを巧妙なアウトボクシングとケージレスリングで完全シャットアウトし、3度目の対戦ではっきりと実力の差を見せ付けた王者アレクサンダー・ヴォルカノフスキーが、判定で4度目の王座防衛に成功した。

 

 

 

幼少期からレスリングを始め、14歳の時にラグビーに転向。

地元オーストリアのプロラグビーチームに所属し活躍する。ちなみに当時の彼の体重は100kg台あった。

2011年に興味があったMMAを始め、プロラグビー選手を辞めて2012年にMMAデビュー。

体重をミドル級、ウェルター級へと徐々に落としていき、2015年にPXCという団体で、後にRIZINで有名になる矢地祐介とフェザー級タイトルマッチを争い、三角締めで4R一本勝ちで矢地を下して王者に戴冠した。

2016年にUFCデビュー。粕谷優介、廣田瑞人と日本人選手相手に2連勝を果たし、日本人キラーとして俄かに注目される中、ヴォルカノフスキー自身もUFCで勝ち星を積み重ねていきランキングを上げていって、ジョゼ・アルドやチャド・メンデスといった有名選手を相手にも勝利を飾ってゆく。

2019年12月、当時UFCフェザー級王者だったマックス・ホロウェイに挑戦。

身長差がある中でヴォルカノフスキー圧倒的不利の予想が多い中、踏み込みやパンチの打ち始めを狙うコンパクトなローキックと巧みなフットワーク、182cmという意外なリーチの長さを活かした左フックでホロウェイの得意分野であるボクシングを戦術的に封じ込め、判定勝利でUFCフェザー級王者に戴冠する。

当初はテクニカルだがやや地味な印象を持たれていたが、2021年9月に行われたブライアン・オルテガとの防衛戦では、オルテガのフロントチョークにあわや極め掛けられる大ピンチを逃れ、そこから反撃に転じる大激闘を演じ、年間最高試合に選出されて知名度と人気を一気に押し上げた。

 

ラグビーとレスリングで培った強靭なフィジカルと無尽蔵のスタミナ、メンタルの強さが最大の持ち味で、自分よりも体格の大きい選手に当たり負けしない強さと、即座にTDを奪い強力なパウンドを打ち込んでゆく。

現UFCミドル級王者イスラエル・アデサンヤが所属するシティキックボクシングジムやタイガームエタイによく出稽古に行っており、重心を真ん中かやや後ろ足に置いたアップライトの構えから繰り出されるクイックローや左ミドル、リードジャブを駆使しての中間距離の打撃戦が得意で、相手との身長差を卓越した打撃技術と182cmという高リーチで持ってカバーしている。

打投極を連携させたレベルチェンジの技術には特に定評があり、打撃やコンボを打ち終わった後に身体が居着く事なく即座にシングルレッグ等の組みの動作に移行できるので、打→投、または投→極への切り替えが、まるでコンビネーションブローのような連動性がある。

相手からすればヴォルガノフスキーの打撃とタックルの両方に常に警戒しなければならず、トリッキーなレベルチェンジの仕掛けと戦術の巧みさを持って相手を撹乱させ、自分のペースに持ち込んでいくのが、ヴォルガノフスキーの必勝パターンだ。

料理が得意という意外な一面を持っており、自身のYouTubeチャンネルでも披露している他、コーチを務めたTUFでは教え子たちに手料理を振る舞っている。

持ち味の試合運びの巧さとフィジカル、カーディオの強さに加え、ボクシングテクニックとディフェンス能力、打撃の殺傷能力が向上した事で、階級最強のホロウェイを相手にしても完全ドミネイトで王座を防衛したヴォルカノフスキー。

次の目標はフェザー級の防衛最多記録に加え、ライト級に階級を上げての2階級制覇にも期待が掛かる。