電車に揺られながら数十分、主は待ち合わせの駅に付くとすぐさまトイレに向かう。今日は久々のデート。

容姿チェックにも力が入る。ついでに排泄も済ませると、中央改札を出て、電光掲示板の前に恋人・麻友を
見つける。思わず足が速くなる。

「ごめん、いつもより早いね。待った?」

「ううん、全然。仕事が早く終わったから」

麻友は満面の笑みで応える。黒い長いストレートの髪に整った童顔。誰もが羨むビジュアルに、大学時代は「CG美少女」と呼ばれていた。

麻友と主は同じ大学のサークル仲間で、大学三年から付き合いを始めた。主の中では少し結婚も考えている。今日はお互いなかなか会えない中、予定をあわせた久々のデートである。

「夕食の前に行きたい所あるんだけど」

躊躇いながら麻友は上目遣いで主を観る。

「なに?」

「アニメイト」

「ああ、いいよ」

「本当?やったー!」

麻友は子供のようにはしゃいだ。麻友は筋金の入りのアニメオタクである。主は当然それを承知して付き合っている。

彼女の影響かいつの間にか主も少しアニメをみるようになっていた。

駅からすぐのアニメイトというお店に入る。入るなりアニメ雑誌やフィギュアだらけの店内。スーツ姿の大人が二人とは少し滑稽な絵である。店員も少し二人を不思議そうに見ていた。

そんな視線を尻目に麻友は新作アニメのグッズに夢中になっている。興奮したようにそのアニメの説明や見所など語り始める。一度こうなっては止まらない。主は不機嫌にならない程度に相槌を打つ。

よくよく聞いていると魅力がわかるような気もしたが、そう思ったすぐ後に麻友はハッとしたように「ごめん……」と謝り俯いた。

「あはは、いいよいいよ」

と主は明るく笑った。