こちらも金曜ロードショーを録画して観ました。
小さい頃に一度観たことがあるんですけど、豚がカッコつけて飛行機乗ってるのが面白かった、って記憶だけでストーリーはほとんど記憶に残ってなくて。
今回のテレビ放映の機会に、しっかり観てみることにしました。
前週の『君たちはどう生きるか』がひどかったせいか、すごくいい作品に感じました 笑
まず、森山周一郎と加藤登紀子の声ですね。
僕はジブリ映画で芸能人が声優をするのがあまり好きじゃなかったんですが、この映画に関しては「めっちゃいいやん」ってなりました。
ポルコやジーナの渋さや大人の色気が溢れんばかりでしたね。
多分、変に芸能人を声優に使うようになったのはこの作品くらいからでしょうか。
この作品で悪い意味で味をしめてしまったのかもしれませんね 笑
途中の台詞もよかったですね。
「女を桟橋の金具ぐらいにしか思ってないんじゃない?」とか「尻の毛まで抜かれて鼻血も出ねぇ」みたいな意味はよく分からないけど、お洒落だったりウィットに富んでいる例え…
舞台のイタリアに合わせた演出だったんでしょうか。
それが個人的に耳に残りましたね。
僕がこの作品を好きなのは「男ってバカだな、でも分かるなぁ、それがいいだよなぁ」って共感や羨望の感情を持てたからだと思います。
女性を巡って命懸けの決闘を申し込む、そして勝利の報酬よりもプライドのためにその申し込みを受ける…
別に命を賭けるまでしなくてもいいだろうと思えますけど、大事なものを手に入れる・守るためには命を賭けるくらい一生懸命になれるのが男が理想とする男で、それがカッコよく思えるんですよ。
だから、敵役のカーチスも決して憎まれ役ではなく、こっちはこっちでカッコいいんですよね。
これに関連してですけど、この映画って他のジブリ映画と違って、"憎むべき悪" みたいなヤツがいないんです。
空賊って悪人みたいなヤツらが出てくるんですけど、どこか抜けたヤツが多い。
オープニングに出てきた空賊が子ども十数人を人質に連れて行こうとするんですけど、数人は残そうとしたところで「みんな連れて行かなきゃかわいそうだろ」と言ったり、飛行機から海に飛び込みそうな子どもたちに対して「危ない」って注意したり、子ども想いに描かれています。
他に "憎むべき悪" みたいなヤツも出てこなかったように思います。
こういう完全に善悪が分かれていない感じも好印象でしたね。
最後の展開も少年漫画を読んできた人なら胸が熱くなったんじゃないでしょうか。
飛行機で派手に撃ち合いをして決着がつかず、最後は単なる殴り合い。
結局、最終的な決着をつけるのはシンプルな勝負がいいんですよ。
昔で言えば、『幽☆遊☆白書』で浦飯幽助と酎っていうキャラクターが序盤は霊力や妖力で戦うんですけど、お互いにその力が尽きて最終的に殴り合いで決着をつけます。
最近で言えば、『葬送のフリーレン』でも魔力が尽きた老魔法使いが「殴り合いじゃあ!」ってかかっていくシーンも、笑ったけど「このじいさんカッコいいなぁ」って思いました。
いろいろ複雑なルールで戦った後に、シンプルな戦いで決着をつける、って展開は胸が熱くなります。
「バカだなぁ」って思う人もいるでしょうけど、僕はバカと言われてもこういうことができることがカッコよくも羨ましくも見えました。
カーチスが結果的にわざと負けたようにも見えましたけど、それもまたいいなぁと思いました。
「古い男性観の詰まった映画だ」と批判する人もいるでしょうが、僕は古き良き男のロマンが詰まった傑作だと思いますよ、この映画は。
よくレビューで絶賛されていたイタリアの美しい街並みと海の描写ですけど、僕はそこはあまり感じませんでした。
やはり古い映画なので、くすんだ感じがして。
飛行機の空中のアクションもそこまではなかったように感じました。
もう30年以上前の作品だから仕方ないんですけどね。
だから、今のアニメーションの技術でイタリアの美しい風景や、迫力ある飛行アクションを加えて、リメイクしてくれたらもっと見応えがある作品になるかもな、とも思いました。
ただ、女性蔑視や煙草とかの表現が現代の倫理観に合わせてリメイクされてしまうと、少しこの映画の魅力も削がれるのかな、とも考えてしまいますね。