初めてレイトショーというもので鑑賞しました。

この映画、あまり評判よくないので退屈で寝てしまうんじゃないか心配していました。

それに、観終わって映画館からホテルまで戻るのに繁華街を通るので、そこでちょっと怖い人から絡まれないか不安もありましたし 笑

まぁでも、たまにはいいかな、と思いました。

観終わってスクリーンから出たときに人がガヤガヤしてないし、繁華街の混沌とした感じも映画の余韻と合ってましたし。

この映画を観た後にスクリーンを出て子どもたちの騒ぐ声を聞いたり、太陽の光にさらされたりすると映画とは真逆の世界に引き戻されちゃって余韻に浸るヒマもなくなりますからね。

この映画はレイトショーで観て、繁華街をぶらぶら歩くのが粋です 笑


もう公開からしばらく経っているのでネタバレもしながら書いていきますね。

まず思ったのは、法廷劇みたいな映画だな、ということでした。

そんなに数は観てないんですけど、法廷劇の映画って僕はあまりハマらなくて、面白かったものって記憶にないんです。

このまま裁判ばっかりだと面白くないな、と思って観ていましたが、結末でビックリしましたね。

ジョーカーが他の囚人に刺されて死ぬんです。

そこでエンドロールが始まるので「え?これで終わり?」ってなりました。

だってここで死んだらバットマンのライバルにならないじゃないですか。

そんな呆気にとられた状態でスクリーンを出ました。


けれど、観終わった後に自分なりに考えて、自分なりに納得したことがあります。

少し前に書いた前作『ジョーカー』の感想で、今まで観た作品のジョーカーと設定が違ってモヤモヤした、と書きました。

けど、今作でジョーカーがバットマンと出会わずに死んでしまったことで、そのモヤが晴れた気分になりました。


"このジョーカーは、僕が今まで観たジョーカーと違うんだ"


そういう結論を自分なりに出し、納得することにしました。

このジョーカーは、気弱な性格が故に現実逃避し、身分不相応な賞賛を得たことで "ジョーカー" というキャラクターを得たけど、自分に好意を持つ女性とのなりゆきやいろいろな人から受けた言葉に心が折れて不運な最期を遂げた男なんだ、と。

だからジョーカーと名乗り、呼ばれながらもジョーカーになれなかったんです。

ジョーカーのなり損ないなんですよ、この男は。

これって結構メッセージ性があると思うんですよ。

「そこの気弱なあなた、彼と同じような境遇に置かれたらあなたもジョーカーになり得るんですよ」って。

ジョーカーになり得る人間ってそこらじゅうにいるってことなんですよね。

さらに振り返ると、レディ・ガガから妊娠の報告を受けたのも転機だったんだな、と。

悪に生きると決意しながらも、家庭を持つことに夢見ちゃったことが破滅への引き金だったんですよね。

他にも元同僚の証言とか、自分を慕う囚人の死とか、いろいろなことが自分がジョーカーであるアイデンティティを崩壊させたんでしょう。

結末から逆算すると、作中のいろいろな出来事が結末に影響を与えているんですよね。

その確認をしたいからもう一度この映画を見返したい。

これって映画としては大成功じゃないですか。

少なくとも僕の中では傑作になりました。

この作品の評判が悪いのは、ジョーカーとしてあまりに情けなくて最期には死んでしまうことにガッカリした人が多いからでしょう。

僕のように「これは今までのジョーカーじゃない」と割り切れば、悪に祭り上げられた男が転落する悲劇として楽しめたんじゃないでしょうか。

いや、この作品の主人公はピエロメイクの元コメディアン・ジョーカーです。

この転落は "喜劇" ともとれるのではないのでしょうか。

そういうことも思いついてしまうから、この映画って僕にとって考察しがいがあって楽しめる映画だったんだと思います。


楽しめた部分を長々と書きましたが、ミュージカルの部分にも触れておきたいと思います。

僕はこれまで『ダンサー・イン・ザ・ダーク』『グレイテスト・ショーマン』などの映画のミュージカル・シーンを楽しんできました。

けど、この映画のミュージカル・シーンはあまり楽しめませんでした。

前述2作に比べて、ミュージカル・シーンが地味であまり面白みを感じなかったんですよね。

僕はその場の登場人物が全員踊り出すような派手な方が好きみたいです。

それに『ダンサー・イン・ザ・ダーク』では悲惨な末路を辿る主人公の明るい妄想を、『グレイテスト・ショーマン』では登場人物の決意や恋愛感情などを誇大的な表現としてミュージカルが挟まれているように思いました。

けれど、この映画からはミュージカル・シーンが何を表現しているのか読み取りにくかったです。

何か表現しなくてもいいのかもしれませんが、ないならないでミュージカル・シーンにする必要性を感じないんです。

だから、僕はこの映画に歌うシーンはいらなかったように思いました。

だからレディ・ガガじゃなくて、ふつうの女優さんでよかったなぁと観ながら考えてました。

他の人なら、こんな地味なミュージカル・シーンの意図も読み取れたのかもしれませんけど。


世間の悪評に反して、僕は大好きな映画でした。

正確には、前作の『ジョーカー』と合わせて傑作と呼びたいと思います。

Blu-rayも買いたいですね。

それと、最期に死んだと書きましたが、実は生きていたって続編は作らないで欲しいです。

この "なり損ないのジョーカー" だったからこその名作だったんですから。