仕事柄、観なきゃいけない映画だと思って観ました。
考えることがいっぱいで、上手くまとめられていません。
ただ、松山ケンイチが言ったこと、考えたことを全て否定できないことは事実です。
そう思えてしまうくらい、介護の現場って壮絶なんです。
極端に要約します。
怪我や病気により身体・精神的に衰えたお年寄りを家族が介護します。
特に認知症がひどくなると、周りを食べ物や排泄物で汚したり、介護へ抵抗して暴れたりします。
それにより介護する家族は仕事や休暇の時間も奪われ生活がままならなくなり、相当なストレスもかかります。
「〇〇(介護を受ける人)がいなければ…」
そう思うことは決して不自然ではありません。
だから、この映画の松山ケンイチのような事件を起こすことも僕には理解に難しいことではありませんでした。
さらに言えば、この映画のように、認知症の方が死の際にして介護への感謝や謝罪を述べるなんて聞いたことありません。
そのくらい、介護は救われません。
いや、救われる方法があるとすれば…松山ケンイチと同じ結論に至ります。
僕も在宅介護に関してはいろいろ思うことがありますが、あくまでこれは映画のレビューなのでここでの発言を避けます。
ひとつ言えるのは、この映画での介護の風景は現実に起こっていることです。
介護の現実を知りたい人は是非この映画を観てください。
エンターテイメント、あるいは芸術の視点でこの映画を観ると、やはり松山ケンイチは素晴らしい俳優ですね。
冒頭の優しい介護士から、逮捕後のサイコパスな容疑者への変わり様、そしてラストシーンの介護疲れと家族への愛情の間で苦しむ青年の姿はかなり惹きつけられましたね。
長澤まさみとの対峙のシーンはすさまじかったですね。
僕の集中が切れかかる時間だったと思うんですけど、十分に引き込まれましたね。
殺人を犯した以上、賛同してはいけないんですが、「あぁ、松山ケンイチの言うこともなんか分かるなぁ...」ってなりました。
そのくらい、松山ケンイチの演技には説得力がありました。
前にも少し述べましたが、認知症の方が死ぬ間際に正気を取り戻して介護への感謝や謝罪を述べることなんて現実では聞いたことありません。
松山ケンイチが殺人を犯すきっかけとして「介護を受ける人間は苦しんでいるから、死によって解放させてあげなければ」みたいに決心させるためのラストシーンだったのかもしれませんが、僕には余計な物に感じました。
僕が嫌悪する人の苦労や悲しみでお涙頂戴のためにも見えたからです。
それまですごくよかったのに、このラストシーンで少しがっかりさせられました。
最後の最後でエンターテイメントしなくてもよかったと思うんですけどね。
介護のリアルを伝え損ねたように思います。
決して楽しい映画とは言えませんが、介護の現状を綺麗事抜きで描いているので観ておいていい映画だと思います。
ただし、ラストシーンはやはり現実と思わない方がいいです。
同じテーマで、ラース・フォン・トリアーっぽくフェイクドキュメンタリーみたいに撮ってくれたら、人気は出ないと思いますけど、リアリティに溢れた映画になりそうな気がしますね。