最近のミステリーって幽霊とか妖怪を実在したものとして事件に絡ませるものが多いみたいですね。

僕が目にしたもので言うと、映画で観た『屍人荘の殺人』、漫画で読んだ『虚構推理』、そしてこの『medium 霊媒探偵城塚翡翠』などです。

個人的にはミステリー作品では犯人やトリックを推理したいのですが、心霊現象とか妖怪の存在がありになると、トリックのリアリティが奪われてしまうので、推理が難しくなります。

下手すれば幽霊や妖怪が犯人だったりしますからね。

それが自分は少し不満に思うことがあります。

その点、三津田信三の刀城言耶シリーズはすごくいいですね。

人間が起こしたとは思えない事件が起こりますが、結局は人間のしたトリックだった…と思わせながらどうももやもやしたものが残り、やっぱり人間じゃないものの仕業だったのではないかと思わせて完結する…

物語が完結したときにハッキリとした答えが欲しくなる僕ですが、この作品のもやもやは心地よいから不思議です。


『medium〜』の話をしますと、ヒントを与える霊媒師の女、それを元に現実的な論理で推理する作家の男のコンビというベタな作品で、事件もそんなに不思議だったり猟奇的なものではありませんでした。

読みやすいのは助かりましたが、最後までこの感じだとあまり面白い作品とは言えないなと思っていました。

それが最後の章でとんでもない事実が分かるわけです。

これからネタバレしますので、オチを知りたくない人はここから読まないで下さい。




最後の章では、作家の男が連続殺人犯ということが判明します。

まぁそこはあまり驚くところではありませんでした。

主人公が実は犯人だったという作品は結構ありましたからね。

驚いたのは霊媒師の女が幽霊も見えず、霊を下ろすこともできないと告白したシーンでした。

なんてしたたかな女なんだろうと思いました。

ちょっと女性不信になりそうでしたね 笑

そこから、これまでの3つの事件を振り返るんですが、作家の男が解いた方法より、もっと早くて合理的な推理を披露します。

一度解いた事件をまた新しい切り口で解いていく…「二重推理」とでも言うのでしょうか?

数学の証明みたいに、プロセスはいくつもあって、どれが最も早くて美しい証明かを競うように、作家の男より優れた方法で犯人に到達します。

これは僕の中で新しい体験でした。


この作品がドラマ化されるということで読んだのですが、このサプライズがドラマという観やすい形でいろいろな人に知られるのは楽しみですね。

後味が悪いので、あまりいい印象を持たない人も多いでしょうが、それがこの作品に対しての最高の評価じゃないでしょうか。

それに、この作品はこの一冊で完結するので、ドラマも続編とかは作りにくいでしょう。

少し人気が出ると、ダラダラと続編を作って、観ている方を飽きさせてしまうのはあまりよくないことですからね。

1クールのドラマでバシッと終わらせてもらった方が、この作品の名誉を汚さずに済みますからね。

1クールで終わって、観た人たちに後味の悪さを残して欲しいものです 笑