本を読むのは推理小説ばかりなので、たまには違うジャンルの小説を読んでみようと思って手に取った本です。
200ページもないので手軽に読めそうだし、芥川賞を獲っているので面白いんだろうなと思って本屋で目をつけました。

この本のテーマは、本の帯にも書いていますが、「普通に生きること」です。
自分のことを書きますが、40歳近くで独身でパートナーもおらず、仕事はまぁまぁちゃんとした仕事をしており、仕事以外では映画鑑賞、読書、音楽鑑賞、楽器演奏、ジョギングや筋トレなどの運動をして過ごしています。
こんな生き方をしている僕は普通の人間なんでしょうか?
確かにいい歳をして未婚の人間は変わった人間に思われる風潮はありますが、今は四十路で独身の人間は多いし、上記の趣味も変わったものはないと思っています。
職場では孤立しているわけではなく、仕事の話以外でも世間話はするし、友人も少ないながらいます。
この主人公も、少し異常とも言える思想があったり、言動があったりしますが、職場では他の職員から普通に話しかけられています。
普通でないなら、他の職員からある程度の距離をとられているでしょう。
だから、僕はこの主人公も僕自身も、そこまで普通の人間じゃないことはないのかなと思って読み進めていました。
けど、登場人物の何人かからは、この主人公は普通じゃないと思われています。
「仕事は普通にこなして、人との会話もそれなりにできているのに、それだけじゃ普通じゃないんだ。普通のハードルって高いな」「僕も何人かの人間には普通の人間とは思われてないんだろうな」と思わされましたね。
この小説の中には結局どう生きるのが普通とは明確には書かれていません。
その答えをはっきり書かないのが面白い小説で、賞を獲れるような作品なのかなと思いました。

この結末はハッピーエンドなのかバッドエンドなのか、議論の対象になりますね。
本人は生きがいみたいなものを見つけられたので幸せなんでしょうが、その生きがいをかわいそうに思う人もいる。
結局、この話をハッピーエンドかバッドエンドかどちらに判断するかということは、自分が普通の人間かどうかを自分で決めるか他人が決めるかということになってくるんでしょうね。
僕は、本人が自分がこれからしていくことを決めることができたんだからハッピーエンドだと思いたいし、他人からは普通の人間と思われなくても生きがいが見つかったのだから、人間らしく(≒普通に)できてるんじゃないかと思います。
僕がこの主人公にシンパシーを感じて、都合よく解釈をしてしまっているのかもしれませんけどね 笑

ひとつ気になったのは、なぜ正社員にならないのかと言うことです。
体調が悪いからとは言っても、普通に勤務してる人をアルバイトのままにしておくものなんですかね?
コンビニって、正社員にせずアルバイトをちょこちょこと雇った方が経費の節約ができて経営しやすいんですかね?
この主人公も正社員って肩書きがあれば周りからそんなに心配されることはなかったし、普通というものに近づけたんじゃないかと思います。
体調が悪いというのがアルバイトのままである理由としてはちょっと弱い気がしたので、そのへんのコンビニ事情があったなら書き加えておいて欲しかったですね。