久しぶりにテレビで放送されているのを観ました。
樹木希林さんはすごい女優さんだった、って言われるから、ちょっと注目して観てたんですけど、演技のことなんて何も分からない僕でも樹木希林さんの演技にはグッと来るものがありましたね。
言い方は悪いですけど、貧乏な小汚いばぁさんそのものでした。
こういう役を演じても、どこか気品みたいなものが隠しきれない女優さんが多いですけど、樹木希林さんは完全に消えていました。
印象に残ったのは、みかんの食べ方です。
僕は仕事柄、年寄りに関わることが多いですが、ちょっと下品なばぁさんって、みかんの皮を半分くらいしかむかないで、皮までしゃぶるように食べるんですよ。
僕はそれがちょっと苦手で、見ていて「うわぁ…」って思っちゃうんですけど、樹木希林さんも同じ食べ方をしていました。
重要なシーンではなかったんですが、このばぁさんの小汚さとか不気味さみたいなものがすごく伝わってきました。
こういうこまかいシーンで人を引きつけるところも、大女優と言われる所以なのかなぁと思いました。
安藤さくらも、貧乏家族の母ちゃんみたいな役が似合っていましたね。
綺麗すぎないし、ちょっと意地悪そうな感じがこの映画での役にピッタリでした。
彼女も印象的なシーンがあって、警察官に「子どもはあなたのことを、お母さんやママと呼んでいましたか?」みたいに言われて泣くシーンはよかったですね。
号泣じゃなくて、じわーっと込み上げてくるように泣いていたんですけど、僕も観ながらちょっとじわーっときました。
リリーフランキーも、あの不健全なルックスはこの役にピッタリでしたね。
声が渋すぎるので、もう少し煙草や酒に焼けたような声だったら、もっとよかったですけど。
松岡茉優はちょっと小綺麗すぎたかな。
さっき述べたように、貧乏な役を演じても、気品みたいなものが消せてなかったですね。
カンヌ映画祭で賞を獲っただけあって、話の展開はフランス映画っぽかったですね。
淡々と話が進んでいって、あることをきっかけに不幸に見舞われるけど、少しだけ希望が残る、みたいな、、
僕の周りでは評判悪かったですけど、僕はラストあたりの流れは好きでしたね。
毎日一緒に生活してきた家族だったのに、結局、誰が誰を大切に想っていたか分からなくなる感じ。
僕は、こういう映画が話題になるのは、個人的に嬉しいです。
"愛" だの "絆" だの、軽々しく言われるものが、いかに複雑なものか教えてくれましたからね。
日本でこれほど報われない映画を作り、話題になったことは大きな功績だと思います。
ただ、やっぱり邦画の甘さみたいのがあって、これがフランス映画なら子どものどちらか、もしくは2人とも死んでいたでしょうね。
この映画、僕が以前に不満たらたらに書いた『三度目の殺人』と同じ監督で、それよりは今回の映画はよかったなぁと思ったんですけど、やっぱり好きになれない部分もありました。
最後、子ども2人が何か語りかけているけど、口の動いているだけで何を言っているか分からない。
「何て言ってるかは、みなさん想像して」って感じなんですけど、僕はやっぱりそういう結末を濁すような感じは好きになれませんね。
そこがなければもっと好きになれる映画だったんですけど、是枝監督のそういうところは本当に残念です。