虹の生まれた場所52 | 楽々主義

楽々主義

徒然なる日々

『リトス、お前の話を耳にしたのはそんな研究調査の最中、バーハルトがこの地を訪れた時であった。
カインは生きていた。そして、とある村で暮らしているとな。カインのヤツは、相変わらず記憶は戻らなかったらしいが、ある日突然に行方不明になったという話だ。
しかし、問題は妻の存在だ。その妻というのが、何とリーヴァだと。そして、カインが行方をくらましたのと前後して、二人の間に子どもが生まれた。』
『ちょっと待ってください、母は、僕の母は人間ですよ!?』
『アクアという種族の力だ。。。生命の源を司るのだ、その存在を書き替えることなど容易いことよ。ただ、2度とは戻れぬという制約付きでな。
どうやら、カインを追ってすぐにエデンを出たらしい。当然アクアは怒り猛り、リーヴァを追放処分とした。まぁ、リーヴァ自身もう戻るつもりはなかったのだろうな。それを契機に、人間になったという。つまり、リトス、貴様は混血。人間と妖精のな。』

空気が凍りついたように、静寂が流れた。誰も言葉が出なかったのだ。

しばしの後、リッドが呟いた。
『そりゃ、、、あ一大事だな。今までの多くのことに合点はいったけどよ。』
『ああ。これまでの妖精から僕に対する様々な対応が、その意味が分かった。
しかし、、、だからといって僕はこれからどうしたらいいのだろう。あまりにも大きな話で、頭は理解していても気持ちが追い付いていかない。。。』
『フッ、だが、これで分かっただろう。カインの、ヤツの身勝手な行動は、私はおろか妖精界にまで影響を及ぼした。
お陰でこの有り様だ。元々は友好関係にあった人間と妖精。その間に大きな溝を作った元凶。しかし、当の本人は記憶を消されたせいで無自覚だ。私がこの姿になってどれだけ辛酸を舐めたことか。
それまでの地位や名誉、研究成果、全てを失ったのだからな。』

リトスは、タートスの怒りはもっともだと思った。自分の出自を知れたことに対する喜びはそこにはなく、むしろ、その存在が今の様々な状況の根本だと分かったことで、リトスの胸中に去来するものは、ずしりと重い鉛の塊のような感情であった。