君と過ごした嘘つきの秋 | 楽々主義

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徒然なる日々

認識の齟齬が仇となるんだねっていう話。

水生大海さんの『君と過ごした嘘つきの秋』を、読みました。

風見高校に九遠寺絢子という教育実習生がやって来た。彼女は女子大生作家という顔を持ち、それを知った映研は小説を題材に映画を撮り始める。
映画に出演した友樹と響だったが、撮影期間中に、屋上から骨格標本が落下する事件が起きる。
撮影場所として使っていた映研や友樹達はたちまち容疑者にされる。疑いを晴らすべく、宙太やユカリ、紀伊は調査に乗り出す。誰も彼もが無実を訴える中、過去に屋上で転落事故があったことが明らかに。果たしてそれらは関係しているのか、嘘をついているのは一体誰なのか。。。

第二段ですね、このシリーズの。
あの島田荘司さんが推薦している作品だけに、期待も高まりました。
前回の話から地続きで、
その辺りはきちんと前作を読んでおくと、
尚分かりやすいです。
とはいえ、
独立はしていますので、
この本だけでも十分に楽しめるかと。

最近の青春ミステリの傾向に同じく、
誰かが殺されるような話ではない。
しかして、
まさに青春ミステリの王道。
登場人物が、比較的現代の高校生像に近く、読みやすい。

誰かの為の嘘。
というのも、
実にこの年代にマッチしたもので、
誰が、どうして、というところに、
リアリティがある。

奇抜さこそなく、
どんでん返しや、
意外性という意味でいうと、
全く真新しさはないけれども、
読み手に推理をさせたい。
という気持ちが表れていて、
むしろ好感がもてる。

誰かの一つの気持ちがあるとして、
それが正しく他人に理解されているか、
或いは伝えられているかというのは、
実際には分からないことが多くて、
そのズレは時として致命傷にもなる。

言わなくても分かるよね。
言われなきゃ分からないよ。
そんな些細な亀裂が、
一人一人のちょっとした誤解が、
結果として大きな過ち、誤りに。

真実がいつも、
幸せなこととイコールではなくて、
明らかにすることで、
何かしらを徹底的なまでに、
破壊してしまうこともある。

知りたくなかった、
知らなくてもよかった、
そんな答えが導き出される場合もある。

真相を解明するということが、
謎を解いてしまうということが齎すエピローグは、
万人にとって、ハッピーエンドというわけにはいかないんだということがよく分かる物語だ。

開かずにおきたいパンドラ。
それは、黒歴史と呼ばれたり、
若気の至りと呼ばれたりしながら、
誰しもに当てはまるものがある。

青春のなかには、
モラトリアムのなかには、
そうした一種の痛さや苦さが、
隠れているものだと。