『リトスっち、動かなくていいぜ。まずは、俺っちたちで様子を見るから。もし、ヤバそうだったら援護だけ頼む。多分、複数相手にするのは、俺っちたちの方が慣れてる。』
僕が返事をしかけた次の瞬間、ドアが蹴破られ窓が割れ、そこかしこから、数人の影が侵入してきた。
『ゴレムっち!!』『分かってるぅ!』
二人は同時に動いた。魔法を唱えながら、影に向かって走る。僕は二人の様子、と敵の位置が把握できるところに控えた。
『リーフハリケーン』『ロックニードル』
葉の竜巻、そしてそこから尖った石の礫が次々と放たれる。見事に影をとらえ、敵はどんどんと撃沈していく。一瞬の勝負だった。
倒れた者は、一様に仮面を着けていた。その中の一人の仮面を取る。
すると、中は驚くことに、子どもであった。まだ、十代前半と思われる風体。どういうことなのだろうか。
三人は疑念と戸惑いを浮かべた表情で、しばしお互いを見合う。誰もが困惑していると、頭上から拍手が鳴り響いた。
『いや~、実に見事な手際だねぇ。やっぱし、強いんだなぁ、妖精って。』
声を辿って見上げてみると、割られた天窓から、誰かがこちらを見下ろしている。
『手荒なことしてゴメンねぇ。』
逆光になっていて、姿はほとんど影になり、顔は分からないが、声からすると、やはり彼もまだ子どもなのだろう。少しまだ声の変わりきらない響きをしている。
『君は一体誰なんだい?どうしてこんなことを。アクアについて語れないというなら、そう言ってくれれば、大人しく引き下がるよ。』
目を細め、見上げながら声をかけた。
『あ~いやぁ、そういうのとも、ちょっと違うんだよねぇ、お兄さん。僕はねぇ、単純に妖精が大嫌いなんだよ。アクアにしたってそうさ。』
『何を言っているんだい、君は。』
『ああ、挨拶がまだだったねぇ。僕の名前は、タートス。人間さ。
んふふふ。信じられないって顔だねぇ。お兄さんは、まさか自分だけが妖精の見える、特別な存在だとか思ってたのかなぁ。
しかもねぇ、何と僕はこれでも100年以上生きているんだよ。呪いというヤツでねぇ。
お兄さんがお探しの、アクアという妖精にとある魔法をかけられて以来、ずっと歳を取らない子どもの姿になってしまったのさ。』
『お、大人をからかうものじゃないよ。』
『んふふふ。だから言ってるじゃない、僕は歳はお兄さんより上なんだって。』
そこで言葉を切ると、彼はこう言った。
『お前が憎きカインの息子、リトスということぐらい、お見通しなんだよ小童が!!』
その暗い闇のような冷ややかな声に、息を飲んだ。何も言葉が出ない。。。
ただただ、目の前の少年の放つ、この世の深淵の様な雰囲気に、冷たい汗が流れた。