虹の生まれた場所23 | 楽々主義

楽々主義

徒然なる日々

『考えている暇は与えんぞ。』
ディルガインが一気に力を解放する。
体にズンと、重圧がのしかかる。
『人間ごときに扱えるわけはナイが、品が品だ。こちらも、遠慮はなしでいく。』
大気の震えを肌で感じる。
体の大きさが2倍ほどに感じる、凄まじい闘気を放っている。
その闘気を右腕に集中させていく。それに吸い寄せられるように、そこかしこの岩が集まっていく。ピキッという音とともに、高密度に圧縮されていく。
やがて、腕に纏わり付く岩が黒々と、まるで鋼鉄のような色へ変化した。

『さて、いいだろう。アクノスごと、散るがいい。』
此方へ視線を向けた刹那、地面を蹴り、跳ぶ。
周りが陥没するほどの力で。
地面すれすれを、まるで鳥のように。

“焦るな”
体の内側に流れ込むような声がした。
“落ち着け”
どこか懐かしい響きの、そして心地の良い声が。
肩から力を抜き、剣の切っ先をディルガインに向ける。。。

ゆっくりと目を閉じた。
“闘いにおいて思考は動きを鈍らせる。あらゆる情報を頭で考えるのではなく、体で感じるのだ。反射にまで技を高めろ。”
これは、僕の流派の教えだ。
空気の流れ、音から位置を、そして相手の気配から殺気を見いだし、間合いを測る。点で捉えず、線で捉える。
全神経を前方に集中する。

空気を裂く音が聞こえる。
呼吸だ、距離はもう僅か。
流れが変わった。右腕を振ったのだろう。
殺気の塊、拳だ。

短く息を吸う。止める。
目を開く。
拳は眼前に迫っていた。
右前方に踏み込む。
そのまま腰を切り、体を流す。
拳は左頬を僅かにかすめた。
チリッとした痛みが走る。
剣を逆手にし、上体を一気に加速させながら元に戻す。
突きを出す要領で、剣を振るう。
しかし、剣は刺さらなかった。
とてつもなく硬い何かに当たっていた。
『しまった。』
よく見ると、それは人の形をした岩の塊であり、ディルガインではなかった。
『遅い!!』
背後から声がした。
咄嗟に前に跳び、転がりながら体勢を反転させる。
間合いを開ける。
『ち、チョロチョロと!!』
今度こそ、右腕を引きながら、ディルガインが真っ正面から駆ってくる。