車で帰宅途中に、ふと夜空を見上げたら、そこにはやけに大きく見える月がぽっかりと浮かんでいた。その時、はたと膝を打つように、何かがわかったような気がした。

人は何故星に祈るのか。ぽっかり、と形容される月は何を象徴しているのか。

人が蹉跌するとき、ふと見上げてしまうのは、夜空なのだ、と。

当てのない道を歩みながら、どうにもならない果てしない壁に眼前を塞がれ、進むべき方向にさえ迷ってしまった時にすることといえば、途方にくれて天を仰ぐだけだ。そしてその視線の先にあるものに何かを願わずに入られず、燦々と輝く夜空にぽっかりとあいた穴に、己を見出さずにはいられないのだろう。


そういったとき、星は普段見ているそれよりははるかに煌々と瞬き、月は“狂信的な”まで虚無へと誘うのだ。

星や月は、はるか昔から同じようにそこに在るだけなのに。