雨の日はキライ。
特に今日みたいな雨は。
ましてや、彼とケンカした次の日の朝なんて。
(たいしたけんかではなくて、お互い意地張っちゃっただけだけど)
最悪。
『七色の少女。』
家の鍵を探して机から何からひっくり返していると、昔大切にしてた『虹の玉』が出てきた。
といっても、ただのビー玉だ。
なんで『虹の玉』なんてたいそうな名前つけたのかなんて、もちろん忘れた。
それより早く鍵を見つけないと、遅刻だぁ。
うはぁ。
ビー玉を持ったまま、ふと窓の外を見ると、水溜まりにはしゃぐ小学生たち。
元気でいいね。
はは、あたしにもあんな頃があったんだ。
だから急がなきゃ!
うはぁ。
持っていたビー玉をぽっけに突っ込んで、駆け出した(学路をかける少女、あたし)。
学校の授業なんてのは、基本的にぼぉーっとしていれば良くて、
そこそこにそこそこな学力を持つあたしは、テスト前に頑張ればそこそこな点を取れる。
だから今は、お昼に購買で限定販売するメロンパンのことを考えたりする。
おいしそう・・・・・・。
そうして向かえたお昼休み。
あたしは友達と購買へ向かう。
周りの女子を容赦なく蹴散らし、何となく悪ふざけで周りの男子に愛嬌を振りまく。
「やったぁ、メロンパン残ってたあ」
なんて、友達のAちゃん(ここで伏せると、神妙になるね)ははしゃいでる。
カラン、コロン。
その時、ざわついた廊下に小さな音が響いたけど、そんなの誰も気づかなかった。
もちろん、あたしも。
高校生ともなればもう大人なわけで、そんな物音一つでいちいち何かを感じたりはしない。
授業はあたしの眠気が醒めるとともに終わって、帰り支度に精を出す。
今日みたいにバイトもなくて、友達と買い食いする予定もない日は・・・・・・。
下駄箱の向こうで、彼が待ってる。
昨日けんかしたばかりなのに、律儀に待ってる。
あたしは顔も見ずに、もちろん声もかけずに、一瞬彼の横に立ち止まって。
歩き出す。
慌てて彼が後ろから付いてきて、曇り空の通学路を二人で歩いた。
気まずそうしている彼のことだ、もうそろそろだろう・・・・・・。
「あ、えと、俺・・・・・・。昨日は、ごめん。」
ほら、きた。
我慢できなくて謝るのはいつも彼。
それを許すかどうか、ちょっとだけ迷って、結局許すのがあたし。
だって、彼は子どもで。
あたしはもう、大人だから。
「仕方ない、ゆる・・・・・・」
「あぁ!!」
遮るように(事実遮ったぞ、コイツ)彼はあたしを指差して叫んだ。
なんだなんだ。
そう思って気づいた、彼はあたしを指差したのではない。
あたしのずっと後ろの・・・・・・。
「向こうの空、晴れてる!」
そんなの指差すほどのことじゃないのに。
彼は強引に、ぽっけに手をつっこんだあたしの手を引っ張り出す。
そのまま手を引っ張って日向に連れて行かれた。
「ほら、これ見て!」
彼が空へ向けて掲げた手には、1つのビー玉があった。
あれ、そのビー玉・・・・・・。
「ビー玉の中! 虹が見えるでしょ!?」
太陽の光をいっぱいに集めたビー玉の中は、きらきら光っていて。
これでもかってくらいに、輝いていた。
いつの間にかあたしが落としたビー玉を、彼は確かに握っていて。
虹を捕まえた!ってはしゃぐ彼は、あたしがあっという間に忘れたキモチを掴んでいた。
「ね! 綺麗でしょ!?」
「今日購買の近くで拾っちった」
「物理で習った、光の性質でさぁ・・・・・・なんかよくわかんないけど!」
マシンガントークを繰り出しては喜んでいる彼は本当に子どもみたいだ。
子どもな彼に、それの本当の名前を教えてあげよう。
「それ、ビー玉じゃないよ! 虹の玉っていうんだよ!」
おかえり、子どものあたし。
あの頃のあたしは、雨の日も大好きだった。
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彼女の気持ちに共感したアナタは⇒⇒⇒
