7月23日(日)に渋谷区立松濤美術館へ


私たちは何者?ボーダレス・ドールズ


を観に行って来ました。






日曜の午後でしたが、ゆったりと観られる雰囲気でした。


平安時代から現代までの日本の人形がおおむね時代順に展示されていました。


第1章の一番最初に展示されていたのが、平安時代に実際に人を呪うのに使われた人形代。胴体の部分に呪う対象の人の名前が書いてあって恐ろしいです…。


12人で山に入ると山の神の怒りに触れるという言い伝えがある地方で、12人しか集まらなかった時に13人目として持って行かれた「サンスケ」という人形が面白かったです。(これで13人目認定されるんだ…。)

他には東北地方の信仰対象であるオシラサマなんかがありました。


第2章では江戸時代の雛人形や武者人形などが見られました。


第3章は明治時代の木彫が中心。「彫刻」という芸術の概念が西洋から入って来たものの、定義があやふやな時代に芸術とは別の文脈で作られていた人形たち、とでも言えば良いのでしょうか?

有名なところでは、平櫛田中の作品がありました。


第4章は、その後に起こった「人形芸術運動」の時代の作品。

平田郷陽の作品、実物見ると迫力があります。

他に良かったのが堀柳女という作家の「御産の祈り」という作品。とても現代的な造形感覚でした。


第5章は「戦争と人形」というテーマで戦意高揚や国威発揚のために作られた人形の展示です。

慰問袋に入れられた手作りの人形とか見ると切ないです。


第6章は前章とは反対に、夢のある人形がテーマで、竹久夢二や、その弟子たちが作った人形、初代リカちゃん人形などがあってほのぼのとした雰囲気。


ここまでが2階の展示室で、次の第7章からは地下の展示室。

第7章は生人形の展示です。吉村利三郎の「松江の処刑」は実際の事件の場面を模した作品なのですが、何ともやるせないです。愛娘の首を刎ねなければならなかった父親の胸中を思うと、人形を見ているだけで辛いです。


第8章はマネキンの展示。日本最初のマネキン、という貴重なものを見ることが出来ます。


第9章は別の場所の展示なので、後述。


第10章は昭和の後半から現代までの人形です。

四谷シモンの球体人形から、蝋人形、フィギュアで人気の海洋堂の作品、海洋堂の作家のBOMEと村上隆が共同制作した作品など。

生人形もリアルだと思いましたが、松崎覚が制作したドストエフスキーの蝋人形を見るとリアルさのレベルが違います。本当に生きている人間かと思うほどリアル過ぎて、ある意味不気味でした。


第9章はいわゆる18禁の作品のため、1階の別室に展示されています。地下展示室の上のバルコニーみたいになっているところです。松濤美術館は何回か来ていますが、あそこに入ったのは初めてです。

展示されていたのはオリエント工業制作のラブドールと、かつて秘宝館で展示されていたという「有明夫人」という人形。

ラブドールはかなりリアルな作りのですが、蝋人形ほどにはリアル過ぎなくて、少しだけ現実から離れたくらいの方が愛着が湧くんだな、とハッキリ分かります。


呪いであったり、祝いであったり、励ましであったり、愛着であったり、人を模した存在である人形には人のさまざまなな思いが込められているのだな、と実感出来る展示でした。


私たちは何者?ボーダレス・ドールズ

は8月27日(日)まで。