失われる「日本人らしさ」に60代姑がげんなり「もう来ないで」と思った理由。

 

お盆休みを重要なイベントと捉えるかどうかは、ひとそれぞれだ。今年は南海トラフの影響もあり、二の足を踏んでいる人も多いだろう。親戚などが久しぶりに集う場では、個人の考えはさておいても、それ相応のふるまいが求められることが多いのも現実だ。

危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、帰省でのコミュニケーションについてこう指摘する。

「近ごろでは個人を尊重すべきという風潮が強まっているせいか、何らかの働きかけが『強要』と取られることを恐れ、場違いなふるまいに対して注意することも憚られるといったケースもあるのではないでしょうか。
また、子供や若年層がスマホやゲームへの依存を強め、リアルなコミュニケーションを敬遠する節があることに不安を覚えている人もいらっしゃるようです。確かに年中行事で親戚が集まる時くらいは、和やかに会話を楽しむといった心がけも必要ですよね」

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今回、お盆の帰省で困ったことについて取材をしていくと、帰省した息子家族を迎え入れた側の女性から話を聞くことができた。2泊滞在したうちのほとんどの時間をゲームに使って帰った息子の妻子にあきれてしまったという「今どき姑」である。

「こちらとしてはなかなか会えない孫やお嫁さんといろんな話をするのを楽しみにしていました。ですがフタを開けてみれば7歳の孫はおろか、お嫁さんまでもがとにかくゲーム漬け。これといった思い出も作れないまま帰っていきました」

こう話すのは現在61歳の内島朱美さん(仮名)。息子の妻は現在30歳。第二子を妊娠中だという。泊りがけでの帰省は実に4年ぶりだったそうだ。

「うちは娘2人と息子1人で息子が末っ子。長女は敷地内で別棟を建てて実質同居しているので、長女夫婦が大掃除や買い出しなんかも手伝ってくれます。
ですから帰省してくる子やその家族には特に何か手伝ってもらう必要もありません。ただ、それってかえって良くないのかなと今回考え直しましたね」

 

今回のことで、大掃除や買物・料理などを帰省した子供やその家族にも少しは手伝ってもらった方がコミュニケーションづくりに繋がるのではないか、と考えるに至った朱美さん。

「最近は姑の立場なんて弱いものです。お嫁さんを傷つけちゃいけないとか、イビりだと思われないようにとか、それこそコンプライアンスみたいなことばかり気になって。うちの主人も会社からしょっちゅうそんなことを言われるようで、私も影響されてますね」

掃除も料理もほぼ何も手伝ってもらわなかったせいで嫁や孫を所在ない気持ちにさせたのかもしれない、と自分自身の行動を反省する謙虚な朱美さんだが、それにしても解せなかったのが嫁の「空気の読めなさ」と「コミュニケーションのなさ」だった。

「『何か手伝いましょうか』と聞かれたわけでもないのですが、お手伝いしてほしいと誘わなかった私にも責任はあるんでしょう。
ただ、とにかく出された物を食べ、自分が使ったお皿やグラスだけは運ぶ、みんなが使った物や料理の皿は片付けない、気を使ってうちの娘やその家族に話しかけたりすることもしないんです」

本音と建前を使い分けるのは日本人の悪しき性質と考える人もいるだろうが、朱美さんはこうした日本人気質が嫌いではない。

「『お先にどうぞ』『いえいえ、そちらがお先にどうぞ』みたいな日本人ならではのまだるっこしいやりとりってありますよね。ああいうのを否定する人もいるけど、私は日本人の謙虚さはこうした『まず他人に勧める』といった姿勢から生まれたものだと思ってます」

お風呂を勧めたとき、「いえいえ、お義父さんお義母さんお先にどうぞ」という返事が返ってくることを想像していた朱美さんだったが、嫁は「はーい」と言って7歳の孫を連れて一番風呂に入った。

「以前泊まりがけで帰省した時にも、気を使われた記憶はやっぱりありません。別にそれでいいんですけど、表面的でも構わないから一旦は遠慮するくらいの方が相手への配慮が感じられて人間関係がスムーズになると思うんです。日頃周りの人とうまくやれているのか心配になりますね」

☆次回、たまり続ける姑の鬱憤。その後の家族の様子を詳報する☆

取材/文 中小林亜紀