LINEヤフーに異例の指導 韓国ネイバーとの「深い関係」どうなる

(朝日新聞 2024/03/06)

 

 総務省が5日に発表したLINEヤフーへの行政指導は、同社の経営体制のあり方にまで踏みこむ異例の内容となった。同省は約1億人もの利用者を抱えるLINEアプリの情報漏洩(ろうえい)を「重大な事案」(松本剛明総務相)と受け止め、改善が見られなければ業務改善命令を視野により強い措置をとる考えも示した。LINEヤフーは再発防止策を根本から見直す必要に迫られる。

 

 昨年10月にヤフーと合併したLINEはもともと、韓国IT大手ネイバーの日本法人として設立された。いまも資本・業務上の関係は深く、社内システムで従業員の権限を管理する「認証基盤」は一部共通化されている。LINEの利用データの分析を、ネイバー側を通じて外部委託するなどの業務を効率化できる側面があったが、これが不正アクセスの経路になった。


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 この認証基盤の分離にはすでにLINEヤフーも着手しており、出沢剛社長は「(完了までに)3年くらいの時間がかかる」との見通しを示していただが、今回の行政指導で、総務省は「技術的な分離措置などを講じるのみでは不十分」と指摘し、親会社との関係見直しも迫った。経済安全保障上の判断もあるとみられる。LINEヤフーの関係者は「ここまで厳しい行政指導は想定していなかった。対応を一からやり直すことになる」と漏らす。

 

 韓国は個人データ保護の国際枠組みに参加しており、本来、業務上のデータ連携の障壁は小さい。だが、総務省が同社とネイバーの関係を問題にしたのは今回が初めてではない。

 

 同省は昨年8月、ヤフーが検索サービス利用者の位置情報などを十分な説明なくネイバーに渡していたとして行政指導している。ヤフー検索は、米グーグルとの契約期間が来年3月で終了するため、ネイバーが提供する検索エンジンに置き換える可能性も選択肢にあがっている。

 

 LINEヤフーは業務効率化などのため、LINEとヤフー、PayPayのデータ連携拡大を進めるが、リスク対策が急務となっている。(渡辺淳基)