Phoebe Snow
Never Letting Go
1.Love Makes a Woman
2.Majesty Of Life
3.Ride the Elevator
4.Something So Right
5.Never Letting Go
6.We're Children
7.Middle of the Night
8.Electra
9.Garden of Joy Blues
Produced by Phil Ramone
[1977]
77年に発売された4thアルバムで彼女はもう一度フィル・ラモーンと一緒に仕事をする事になりました。彼の影響力の大きさは、これまでにでた彼女の3枚のアルバムとこのアルバムを聴くと良くわかると思います。彼と一緒に仕事をした2ndとこのアルバムが同じ雰囲気を漂わせ、彼が少し離れたところにいる1stと3rdがやはり同じ様な雰囲気を漂わせています。
つまりこのアルバムは2ndと同じ様に洗練されたとてもバランスの良いアルバムになっています。勿論それを好むかは聴く人それぞれの自由なんですが(笑)。
このアルバムと2ndアルバムとの大きな違いは、彼女の関与を感じられる量の違いだと思います。このアルバムからは、彼女の鼓動が聴こえて来ます。
錬金術師フィルの技でも抑えきれないくらい彼女は自己主張を始めました。3枚目を彼と離れサンフランシスコで作った事も影響が有ると思います。1stでの稚拙さも2ndでの借りてきた歌手の様な所も克服し、今まで出したアルバムの良いところだけを集めて作られたように感じます。
しかしアルバム全体を通して聴くと何処か希薄な作りとなってしまいました。つまり彼女の持つ稚拙な部分や経験不足などからくるマイナス部分が消えると共に彼女の持つ特徴、あくの強い部分まで希薄になってしまっています。
中途半端と言うと悪いところが有る様に捉えられると思うのですが、実際には悪いところを上手に消し過ぎたのが、やはり2ndと同じ様な結果を生み出してしまったのだと思います。アルバムの完成度の高さ、一般的な美しさという部分で4枚に順序を付けてみると2nd、4th、3rd、1stと言う順番になると思います。しかし彼女らしさという点から見てみると3rd、1st、4th、2ndとなると思います。
又一般的には1stしか知られていないのが現実だと思います。
フィル・ラモーンのやり方に間違いは無かったと思います。アルバムの完成度の高さ・美しさは万人に好かれるものだと思います。彼女のクセのある声を美声にしてしまう彼の仕事は素晴らしいものだと思います。しかしそれが逆に彼女独特の雰囲気や味を薄めてしまっているのも事実です。
ぶっ飛んで結果をだしてみれば、それはとても魅力的で特徴のある声とノリをもった彼女は、その独特の声とノリのために到底フィルの力でも万人に好かれるようなものには出来なかったという事だと思います。フィルもそれを知りながら自分が魅力を感じた彼女を万人に好かれるようにと努力をしたんだと思います。
今回のアルバムでは9曲のうち5曲が自作の曲になっています。共作は有りません。
1曲目の入ってるのはバーバラ・アクリンと言うソウル系の女性が60年代後期に歌った曲です。こう言う特徴の有るリズムは彼女の得意中の得意ですね。ファキーに伸び伸びと歌っています。
2・3曲目は彼女の作品です。私は彼女のギターの響きが彼女らしさの一つだと思うのですが、このアルバムでは自作の2・6曲目だけでしか聴く事が出来ません。緩やかに流れる彼女の歌声には、アコーステック・ギターの音が良くマッチすると思います。
3曲目でのHugh McCrackenのスライド・ギターを聴くとポール・サイモンのアルバムを思い出すのは私だけではないと思います。ラスト近くでのEddie Danielsのクラリネットの短いソロが印象的な曲です。
4曲目は彼女と縁の有るポール・サイモンの曲です。元歌のイメージを壊さずにそれでいてしっかりと彼女の歌にしています。イントロのリチャード・ティーのエレピからしてまんまです(笑)。
アルバム・タイトルでもある5曲目のスティーブン・ビショップ作の歌は彼女以外の人たちにも歌われている曲でとてもシンプルな作りの美しい曲だと思います。将来スタンダードになるかもしれませんね。考えてみればポールもスティーブンもフィルとの関係が深い人ですね。
ウィル・リーの印象的なベースラインで始まる6曲目ではケニー・ロギンズとのデュオが聴けます。5曲目のフィル・ウッズのアルト・ソロと言うこの曲のブレッカーのテナー・ソロといい、フィルは短くて印象的なソロを入れると曲が綺麗にまとまると言う方程式を持っているようですね。
7曲目のような軽く流すような曲は本当に気持ちの良い歌を聞かせてくれるのですが、残念ながら印象に残る押しの強さが有りません。これだけあくの強い声とだと言われながらも不思議な事だと思います。全体に流れる軽やかに踊るようなKen Ascherのアコーステック・ピアノがとても印象的で本当にリラックスした綺麗な曲です。
8曲目はこのアルバムで一番ハードな曲に仕上がっています。と、言ってもこのアルバムの中でと言うだけでアルバム全体の流れを壊すほどのものでは有りません。
アルバム最後に入っているのは1900年代初期に活躍したディキシーランド・ジャグのClifford Hayesの曲です。現代的なアレンジになっていますが、この曲も彼女は自作の歌のように歌いきっています。誰がこんな曲を見つけてきたんでしょうか?私はこのアルバムで初めて聴いたのですが有名な曲なのかも知れません。
どの曲も素晴らしいと思います。しかし全体として希薄な印象と言うのが本音です。
彼女は今も現役です。このアルバム以降も続けて何枚かのアルバムを出し途中で途切れ途切れですが自分のペースでアルバムを出しています。そうヴァレリーのために彼女は歌い続けています。
私の思い出深いアルバムは、1stからこの4thまでの4枚です。
残念ながらマニア向けでもなく、と言って一般的でも無いと言う難しい位置に有る彼女は、多分近い内に1stと最新のアルバム以外は手に入りにくくなる運命だと思います。出来たら何年かごとに出る彼女の新譜に合わせて旧譜も再発してくれればと思います。
Phoebe Snow HP
彼女のHPです。
随分恰幅が・・・(笑)。