
夜中の一時過ぎに何となく外へ出てみた。夕方から涼しく感じてフリースをトレーナーの上から着込んでいたが、ひんやりとした空気に軽くブルッときた。静かな夜だが、家の前の道路から長距離のトラックが走る音が聞こえてくる。月の姿も無く星も瞬かない真っ暗な空が、朝方から雨が降ると言う天気予報を信じさせてくれる。
突然、今ここで音楽が聴きたいと思った。家の中に戻って親父のCDラジカセとRodney Whitaker QtのWinter Moonを持ち出し勝手口の出たところに置いてあるオレガノの鉢の前に置いた。ボリュームを少し低めに設定して小さな音で流していたが、湿り気の有る冷たい空気の中を彼のベースが気持ち良く響いてきた。
折りたたみ式の椅子に座り煙草に火をつけてゆっくりと吸い込んだ。車の音も時たま吹く風に揺れる樹のざわめきも音楽の邪魔には決してならなかった。全てが私を心地良く包んでくれた。時計の刻む時間と別のところに居る気がした。ずっとこのままでいられたらと本気で思った。
意識を超えて耳に入る様々な音、鼻から直接脳へ流れ込むような香り、むき出しになった手や顔に触れる風、呼吸をするごとに口から流れ込む冷たい湿った空気、様々なものが一つになって五感を軽く痺れさせ、自分と周囲の空間が一つになったような感覚の中に居る。
音楽が終わるまでには、まだ少し時間が有る。無理にこの空間から抜け出す理由も無い。「ちょっと吸い過ぎかな」と独り言を言いながら3本目のラークにZippoで火をつけて大きく吸い込み、ゆっくりとはきだした。
Rodney Whitaker Winter Moon
01.For Garrison. 02.Fall 03.Sacrifice.
03.Coming Ship. 04.Spring Birth.
05.Avocado. 06.John Lewis
07.Winter Moon. 08.Beauty And The Beast.
日本のジャズ演奏家との競演も多いRodney WhitakerのQtです。
私個人も彼は若手の中ではイチオシのベーシストです。まぁ若手と言っても今年37才になりますしミンガスのバンドでベースを弾いたりしていますから中堅と言っても良いとは思いますが、私より若いヤツは全員若手です(笑)。
アメリカのSirocco Musicと言う若手を積極的に録音する会社から2002年に発表されたこのアルバムは、これぞ新主流派と呼べる安定した気持ちの良いアルバムです。
ただ彼のバランス感覚の良さが、破天荒な楽しみを削いでしまっているのも事実で、プラスアルファ的な部分が無いのが残念です。そんな部分が出てくれば必ず『名盤』と言われる様な将来的にずっと聴いて貰えるアルバムが作れる逸材だと思います。