令和に入ろうかという折、私は焦っていた。

わけあって早急に結婚し、子供を持たねばならなくなったからだ。

 

『偽装結婚』『友情結婚』『契約結婚』のワードで検索をかける。

当時、それらの言葉が少しずつ世間に浸透し始めた時期だった。

いるのだ。通常の結婚ではない、性的接触を持たない、そういった結婚をしたい人達が。

 

…こんな私でも結婚できるのでは。未知の言葉に心が弾む。

生来楽天的な私は、これで何とかなるだろうという、その時点では皮算用にもならない予感で満ちていた。

 

そして発見したのが、『偽装結婚掲示板』というサイト。

 

そこは性的少数者が書き込み、結婚相手を探す場として機能しているようだった。

自分の居住地域、性などの状態、どのような結婚相手を探しているか、結婚後のビジョンは、子供は、などの希望条件を書き込み、希望が一致する人が直接メールを送る方式が採用されていた。

 

…ここしかない。

 

私は必死に、自分と同じ条件の女性を探した。

同時に自分自身も希望条件を書き込み、まだ見ぬ女性からの連絡を待つことにした。

 

これで全てがうまくいくという期待に溢れていた。