「ファイナル・デッドコースター」でも「ウォーキング・デッド」でもなく、「ファイナル・デッド・ツアー」!タイトル紛らわしいなぁ~(笑)
原題は、“Uncle Peckerhead(ペッカーおじさん)”と、まったく異なっているようだ。
売れないスリーピースバンドが、ツアーに出るためツアーバスを探していたところ、ちょい怪しげなおっさんが、自分が運転手となり行動を共にすることを条件にバンでツアーを廻ることになる。しかし、おっさんの正体は深夜の0時を過ぎると狂暴化し人々を喰いまくるゾンビだったのだ。しかし、ゾンビ化していない時は人の好いおいちゃんのため、バンドはそれを知りつつ行動を共にするのだが・・・というホラー・コメディ。
今作、ホラー映画というよりも、むしろ売れないバンドがツアーをする中で成長してちょっとした成功を収めるまでを描いたドタバタロードムービーとして観た方が違和感なく鑑賞できるのではないかと思う。そこに、ほんの少しホラー要素をまぶしてみました、といった具合。
まず、主役のスリーピースバンド“DUH(ダー)”のメンバー3人のキャラがGood!(バンド名もなんかセンスを感じる!)
見た目超地味だが誰よりもバンドのことを考えているしっかり者のベース兼ボーカル・ジュディ、ガービッジのシャーリー・マンソン嬢を丸くしたような見た目のクールで姉御肌のドラマー・メル、スキンヘッドに髭ボーボーの一見強面だが天然でヘタレなギター兼ボーカル・マックス。彼らの何気ない会話シーンやアホなドタバタ劇は、観ているこちら側も一緒にロードを共にしているような親近感を覚えるほど!
そして、何といってもゾンビ化するペッカーおじさん。人を喰いまくっているのになぜか憎めないという不思議!正常時は、音楽が大好きで、バンドの問題を親身になって考えてくれる優しい人の好いおいちゃんなのだ(笑)しかも、ゾンビ化してどんだけ体ぐしゃぐしゃ食いちぎって人を貪り食おうと、バンドメンバーは襲わないという謎の理性を失っていない面も、何故かおっさんの悲哀を感じてしまう。
その他にも、DURのライバルバンドである嫌味でナルシスティックなボーカルを始めとするメンバー。なよなよしたボーカリストの少ない髪を逆立てたヘアスタイルや出で立ち、ライブ中のギタリストの間の抜けたような合いの手コーラスは、こういうバンドいるっ!とクスッと笑えてくる。爆笑には至らないが(笑)そこが、終始ゆるゆるした雰囲気が漂っている今作の良さでもある。
また、当然バンドが主役ということもあり、彼らのライブシーンが幾度となく挿入されるのだが、これが意外にイケるのだ!ハードコア・パンクをルーツにしつつ、ポップさも忘れていないキャッチーなメロディ。まあ、ヒップホップが主流となった現在、こういったバンドはなかなか売れないわな~。
また、劇中に流れるBGMも基本生音で奏でられるロック系のインストが中心で、ロック好きとしては好感が持てる。
おそらく低予算の中で、グロシーンもそこそこ頑張っている。チキンのように食われた顔面から始まる衝撃のオープニングから、DURのライバルバンド全員皆殺しの血肉まき散らしながら(一部糞も含まれる・・・)の大殺戮シーン!などなど。
なるべく人を殺さないように鎮静剤で制御しているというおっさんの言葉を信じていたDUR一行だったが、バンは持ち主を殺して奪ったものであり、実際は制御などしておらず見境なく人を殺しまくっているという事実を知り決別を決意する。冷静になって考え直して欲しいと詰め寄るおっさんの姿に、これまでになかった狂気を感じた。
終盤、ひと悶着あり、DUR一行は殺人容疑で警察に拘束される→マスコミに注目される→バンドは一躍有名に→裁判の結果無罪に→一躍時のバンドとなる。
満員御礼で盛り上がっているライブの中、観客席最後尾で不敵に微笑むおっさんの姿。それに気づき言葉を失うジュディ・・・という、メンバー全員皆殺しはもちろんのこと、その場にいる観客も巻き込まれて大量虐殺になるんじゃ?と想像をさせるホラーあるあるなラストで終わりを迎えるところも良し!
評価★★★(星5つが満点)