1971年、プロテスタント系とカトリック系の市民同士の対立が激化する北アイルランドのベルファスト。この危険地域に治安維持のため駆り出された若きイギリス人兵士ゲイリーは、暴徒の激化により撤退した英国軍から取り残され孤立してしまう。過激派組織や活動家たち敵だらけの中、彼は無事生きて帰ることができるのか、というスリラー。

 

 

敵がもともとは一般市民であり武装した集団ということで、統制も取れてないわ、彼らもおびえている部分があるためどういった判断をするか分からない危なっかしさもあり、ギャング同士のドンパチ映画なんかよりよっぽど緊張感に満ちていた。

ゲイリーが、市民が寝静まった夜の街を一人徘徊するシーン。この不気味な街の空気感は、ゾンビ映画と少し似ているかもしれない。

 

 

ベルファストの街中を走り回って敵から逃げるシーンは、ブレにぶれまくるカメラワークのせいで吐きそうになるが、緊迫感は十分に伝わってくる。

映像も低予算のせいもあるのだろうが、少し暗く鮮明さの欠片もない古い画質だが、当時の時代の空気感や主人公の置かれている状況が逆にリアルに伝わってきて、まるで彼と共に行動しているような錯覚に襲われる。

特に、大ケガを負った体でアパートから脱出しようとするシーンは、ゲイリーのいる位置から、階段をあがってくる敵の位置をワンカットで映して、徐々に近づきつつある危機がリアルに観る者を襲う。

 

 

パブで爆弾が暴発、しかも爆弾を作っていたのは実はイギリス軍の諜報部員であることが判明する。それを知ってしまったゲイリーは、過激派組織だけでなく一部イギリス軍からも追われる羽目になる・・・というサスペンス要素までしっかり盛り込んでくる(笑)

 

終盤、目つきの悪い組織の少年がゲイリーに銃を向け、引き金に指をかけ命を奪うか迷うシーン。ゲイリーは頭を垂れて抵抗できず諦めかけているし、撃つのか撃たないのか、少年の表情から判断できず、観ていて終始ビビっていた。この永遠にも思える時間・・・心臓によくないって・・・。いや~、緊迫感ハンパないっ!

 

 

北アイルランドの史実を基にはしているが、政治的なメッセージなど小難しい要素は一切なく、純粋にサバイバル・スリラー映画として楽しめた。

正直、映像も派手さとは無縁だし、出てくる役者も(同じような顔の人たちが多すぎて区別がつかなくなる時がある(笑))地味である。しかし、ゲイリーがどんどん追い込まれていく、リアルでスリリングな展開によって最後まで飽きさせない。というよりも終始観る者を落ち着かせず緊張させることに成功している。

並みのホラー映画よりドキドキすること間違いなしの良作!

 

評価★★★(星5つが満点)