昭和歌謡meetsカーペンターズ!?

 

カナダのインディーポップバンド、Alvvays(オールウェイズ)の1stアルバム“Alvvays”。

 

 

サウンド的には、ガレージロックやドリーム・ポップ、シューゲイザーであったりと、真新しいことは全くしていないし、革新的でも実験的でもない。

では、数多のギターポップバンドがいる中で、このバンドを特別な存在にしているものはなんだろうかと考えると、やはりなんといっても普遍的なメロディだろう。全編に渡ってセンチメンタルで悲しげなメロディが響き渡っており、まだ純粋だったあの頃に一気にタイムスリップしそう(笑)になるほど郷愁を感じさせる。

そして、Vo.モリー・ランキンの声。投げやりで冷たく突き放しているようでいて、実は包み込むような優しさや温かさをも感じさせる不思議で魅力的な声だ。彼女が歌うからこそ、ただでさえセンチメンタルなメロディなのに、さらに倍増し哀愁ダダ洩れ現象が起きている。

楽器隊については正直なところ特筆すべき個性はない。しかし、各楽曲に合った音を提供しており、いい意味で主張がなく、メロディを最大限に引き出すための堅実な演奏だ。

 

 

1.“Adult Diversion”は、オープニングに相応しいアップテンポで軽快なナンバー。ドタドタしたドラムと、サーフ・ロックっぽいリバーブのかかったギターの音色も良い。

このバンドの本領発揮は、2.“Archie,Marry Me”からで、ここから一気に哀愁を帯びてくる。

3.“Ones Who Love You”は、打ち込みっぽいドラムから徐々に盛り上がっていく。今作中ベースの重心が最も低く、楽曲を引っ張っていく。全体にエコーが深くかかっており、まるで靄の中に迷い込んだよう気分になる。サビのモリーの裏声も心地よく、これぞドリームポップといった感じ。

さらにリスナーに追い打ちをかけるように、5.“Party Police”、6.“The Agency Group”でセンチメンタルのギアをMAXまで上げてくる。この中盤の連打が今作のハイライトか。

 

4.“Next of Kin”や、サビの「What’s it got to do with you? What’s it got to do with me?」がどこかで聴いたことがあるようで懐かしい超キャッチ―な8.“Atop a Cake”で、ところどころアップテンポでロックな楽曲を配置し、アルバムの流れに緩急をつけて中弛みさせないところもよく練られている。

ラストを飾る9.“Red Planet”は、今作中最もダークで、サビの懇願するようなモリーの歌唱が印象的。

 

 

 

昭和歌謡のような郷愁感漂うメロディは、日本のリスナーにとっては古くから刷り込まれておりどこか懐かしく響いて違和感なく受け入れられるのではないかと思う。逆に海外のリスナーにとっては、そこが新鮮で新しいサウンドに聞こえたのかもしれない。

シンプルな単語を並べたフレーズは、すぐにでも口ずさめそうで、そんな素朴さがどことなくカーペンターズを思わせる。

全9曲でトータル32分とコンパクトにまとまっており、聴きやすいのも好感が持てる。

 

オススメ曲

5.“Party Police”

まるで歌謡曲のようなイントロからすでに哀愁ダダ洩れで、サビでのモリーの歌声に寄り添うように奏でられるクリーンギターも素晴らしい。聴き終わる頃には、心にポッカリと穴が開いて呆然としてしまうはず!

 

6.“The Agency Group”

出だしのディストーションギターの響きにドキッとさせられるが、そこから温かなクリーンギターのアルペジオ、シンプルだけど大陸的なドラムが入り、落ち着いたミドルテンポのこちらも哀愁ダダ洩れ仕様へ。サビの郷愁を誘うメロディにノックアウトされる。モリーの儚くて切実な歌声といったら・・・。

 

評価★★★★(星5つが満点)