全米黒人地位向上協会の弁護士サーグッド・マーシャルは、人種差別により不当に告訴されている人々を救うべく全米を日々飛び回っている。そんな中、運転手として働いていたジョセフ・スペルが雇い主の妻をレイプしたという容疑で告発された事件の弁護を引き受けることとなる。現地のユダヤ人弁護士サム・フリードマンと協力し真相を暴いていくという実話を基にしたストーリー。

 

 

マーシャルを演じているのは、故チャドウィック・ボーズマン。スーツにハットがハードボイルド小説から抜け出した探偵のようでクール。また、知的で内に秘めた情熱を静かに感じさせる抑えた演技が素晴らしい。

 

しかし、一番の見所は事件を通じて成長していくフリードマンを演じるジョシュ・ギャッドだろう。お笑い芸人とろサーモン久保田に激似の容姿(笑)と、困っている者を放っておくができない優しい性格に天然キャラが加わることでめちゃくちゃ愛らしいのだ。久保田はゲスキャラだが、フリードマンは真逆(笑)。彼の存在のおかげで、人種差別を前面に扱っているのに必要以上に重苦しくならず、中弛みすることなく最後まで鑑賞することができた。

 

 

裁判では、マーシャルが黒人だということで一切の発言権を与えられず、フリードマンがマーシャルの言葉を代弁することとなる。そう、本当の二人三脚!最初は黒人を弁護するということで世間体を気にしていたが、何があっても信念を崩さないマーシャルと時間を過ごすことで次第に使命感を持ち始める。彼自身もユダヤ人ということで不当に差別されてきたことも関係しているのだろう。

二人の白黒凸凹コンビの掛け合いは、まるでボケとツッコミのようで、法廷ものやサスペンス一辺倒としてではなく、コメディ、バディものとしても十分に楽しめる。

 

 

二人は次第に友情を育んでいき、最終弁論シーンはマーシャルとフリードマンが完全にシンクロして、言葉が心に突き刺さってくる。それまでのおどおどとしたフリードマンはそこにはなく、まるで自身ですべての言葉を選択しているかのように、感情豊かに弁論をする姿に釘付けになり胸を打つ。別の事件の弁護のため、残念ながら最終弁論にはマーシャルはいなかったが、まるでその場にいるようだった。

 

ラスト、フリードマンが無罪で勝訴したことを電話でマーシャルに伝えるシーンは、二人の心が通じ合ったようで感動を覚えずにはいられない。電話の調子が悪くなり、勝利の報を伝える以外、会話ができずに電話を切ることになるが、その後彼らは再会したのだろうか?再会してどんな話をしたのだろう?などといろいろ考えを巡らせてしまった。それほど二人のキャラクターが魅力的で作品に入り込んでしまっていたのだ。

 

 

作品の評価とはまったく関係ないが、今作を撮影中チャドウィック・ボーズマンは癌治療のため痛みと闘いながら撮影に臨んでいたという。素晴らしい役者魂だ!改めて、彼の新作を観たいなどと思ってしまった。本当に残念だ。

サスペンス、コメディ、ヒューマンドラマと、すべての要素がうまい具合に溶け合い、最後には爽やかな感動が待っている名作。

 

評価★★★★★(星5つが満点)