歌手を目指しながら日銭を稼ぐためにショーパブで働くルディと、検事局で働くポールのゲイカップルが、ダウン症の少年マルコと心を通わせ、やがて養子にしようと奮闘する姿を描くヒューマンドラマ。
残酷な結末に向かっていく中で、アラン・カミング演じるルディの少年のような優しい笑顔と眼差しに何度も救われる。
職業柄、自身がゲイであることを隠しながら生きるポール役のギャレット・ディラハントも、アラン・カミングの激情的な演技とは正反対の感情を抑えた演技も素晴らしい。終盤、裁判所で涙を抑え裁判長に主張するシーンは秀逸だ。
そしてなんと言っても、マルコ役のアイザック・レイヴァ!喜び、悲しみ、戸惑い、すべての感情を表情と後ろ姿で表現していて、観ているこちら側に直接伝わってくる不思議な魅力がある。彼の演技がなかったらこの映画はここまで素晴らしいものにはならなかったはず。
彼が笑うとこちらもうれくなり、彼が悲しんでいるとこちらも泣きたくなる。とにかく可愛い。可愛いからこそラストはやり切れない。
どんな気持ちで自分の部屋から出て廊下にいき、行き場がなくて夜の街を彷徨ったのかを考えたら胸が痛む。そして裁判所の下した決断や社会の偏見に怒りを感じる。
悲しみだけではなく、アラン・カミングの女装の美しさも見所だし、序盤のルディがドアから隣のマルコの部屋の様子を伺うシーンは、レオンがマチルダを気にかけるシーンとシンクロしてなんかニヤッとさせられた。
脚本も素晴らしく、一時間半という短さでここまで観る者に深く余韻を残し、考えさせられるのはさすがだ。
評価★★★★(星5つが満点)