彼が来ると腑抜けになる。

何もせずにただ彼のことだけを考えて、食べれなくなり寝れなくなる。

女友達からの嫉妬をビンビン感じながら、2人でぬけがけをする。

ただ、彼と食事をしているだけで、ただ彼からのメールを受け取るだけで、何でこんなに涙ぐみ、嬉しくなるんだろう。

彼のうそに気付かないふりで、彼に対する気持ちにもうそをついたままで、2人他愛の無い話をする。

彼の私に対する欲情にも、蓋をしたままそっとかわす。

喜んでくれる顔が見たくて、何でもしてあげたくなるけど、この夢のような日々を壊したくない。

彼のしぐさを見ているだけで、一喜一憂している自分に驚く。

封じ込めたはずの気持ちが、彼に会う度溢れ出す。

2人の生活を考えられる程、現実は甘くない。

私達が一緒にいたら、お互いだめになってしまうのが見えるから。

一緒にいることで、悲しむ人たちの顔が見えるから。

彼の男友達から聞く、他の女達の彼に対する情熱に唖然とする。

ただそこにいるだけで、女達を狂わせる魔性の男。

今はただ、殻に閉じこもり冷たい視線で人を寄せ付けなかった彼が、私に対して仔犬のようになついてくれていることだけで、満足しておこう。

彼の笑顔を壊さないように、愛に飢えてる彼が寂しくならないように、やさしさで包んであげよう。

これはもう、恋ではなく愛。