お互いの両親への報告が終わったあと、妻は実家に帰った。

そして、翌日身の回りの荷物を取りに来た。
引っ越し予定が決まるまで実家にいるという。


翌土曜になり、いよいよ、荷物を引き払った。


俺はまあ、今更なんだが色々さらに漁り、妻の一番最初の浮気相手の住所を発見してしまった…。


こいつさえ居なければ…、守るべき家庭がありながら妻に手を出し、夢中にさせた男。


妻だって確固とした貞操観念を持ち合わせていればそんな事態にはならなかったのだから、人は違えどいずれは同じ結果になっていたのかもしれない。


だけど、今の俺には憤りの捌け口がこいつしかない。

俺のなかの理性が辛うじて歯止めをかける。


妻の日記をコピーして、奥さん宛に送ってやりたい。いきなり家に押し掛けて全てを暴露してやりたい。


証拠能力は不十分だけど奥さんを追い込むには、家庭を壊すには充分な威力を発揮する。





悪魔の囁きと天使の嘆きが戦っていた。未だに決着はつかない。


妻と妻の父が引っ越しの荷物を取りに来たとき、脅すような言葉を発してしまった。



「最初の浮気相手の住所見つけたからやれるかぎりの行動はする。覚悟しておけ!」


後になって妻にそんな馬鹿なことはしないよ。って言ったけどまだ分からない。だってあいつは俺の心を修復する道を選ばなかった。

だったら、今までの愛は全て覆る。憎悪、憎しみ、悲しみ、苦しみに変わる。


まさにダークサイド。シスの暗黒卿になるのも間近かもしれない。


そして、妻は去った。


何とも言えない空虚な空間。


静寂…





声を出しても返事はない。

振り向いても誰もいない。

俺の持ち物以外は何もない。


妻は実家に戻るそうだ。
この静寂を、孤独を味わうことはない。



家には、親が、猫三匹がいる。




のうのうと家に帰り、今までと大して変わらない日常に戻ることが出来て、結局、本当に大切だったことにしばらく気付くこともないんだろう。



俺は前に進まなければならない。
新しい恋も探さないといけない。


妻の所為で…



胃が痛い
頭が痛い
白髪が増えた
食欲が落ちた
目が虚ろになった
心臓が痛むようになった
眠りが浅い
仕事に集中できない
女を信じられなくなった


まだまだたくさんのダメージが出てくるだろう。

だけど前進していかないと!!


職場の後輩の女の子達に相談をした。


本当は結果が出る前に意見を聞く予定だった。


妻と同世代の女の子達で独身。
何かいいアドバイスを得られればと思ったんだ。


二人に相談したんだけど、二人ともかわいいグッド!


一人は彼氏とラブラブだ。ラブラブというよりは深い愛でしっかり結ばれているといった印象かな?


もう一人は彼氏はいないけど実に素敵な雰囲気を持っている女の子。
ふわっとした感じかな。素敵な笑顔も持ってるし、望めばすぐに彼氏はできちゃうだろうなー。かなり束縛するらしいけど。


結局、事後報告になってしまったんだけど、事の顛末を改めて説明した。


一番俺が印象に残っている言葉はこれだった。



「もし、この先もこの人とやっていこうと思っているんだったら何回同じように浮気されても許せる覚悟が必要だと思いますよ。でもそれができるのならば私はそれは『神の領域』だと思います。」



神の領域…



確かにそうかもしれない。

俺は妻が今までにしてしまった過去は許すつもりでいた。

だけど、同じ事をしたときに「許す覚悟」はないと強く思った。



「手紙読んだけどまるで自分が悪いんじゃないんだって言ってるような気がします。なんかズルいというか…」


実に辛辣な意見ばかりだった。

俺が望んでた意見かもしれない。
俺は普段からかなり冷静なつもりだが今回ばかりは自信が無かった。


妻を知っている人間に相談してもやはり妻に同情するような気持ちが入ってしまう。


もうこの子たちからしたら妻の行動は「あり得ない」こと。

全く持って意味不明な出来事。


俺は心のどこかで妻を救える道はないかと思っていたんだ。

だけど、この子たちと話をしてみて吹っ切れた。

ていうか誰に相談しても妻のこと救いようがないって言うとは思うけど。


もう、未練がましく追うのはよそう。

妻は残念な人だった。
本当に大切な幸せはなんだったのか、見つけることが出来ない人だった。

そう思うことにした。


しばらくは女性不信だが…、まあ、一人の生活を満喫することにしようニコニコ