障がい者とのダイバーシティ&インクルージョンワークショップ | ファシリテーションをあなたの日常に「Fログ」

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特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会(FAJ)のブログです。

日本ファシリテーション協会の前田卓也です。
みなさん、あけましておめでとうございます。
先日、障がい者とのダイバーシティ&インクルージョンワークショップを行いましたので、その様子をお伝えしたいと思います。

【ワークショップ概要】
2020年12月に実施した2時間のワークショップ。ある大手企業(以下A社)から健常者8名、その企業の特例子会社(※)(以下B社)から軽度の知的障がい者8名の合計16名での合同ワークショップ。A社2名、B社2名で1島を構成し、4島で実施。
B社はA社の会議室クリーンアップ、名刺印刷などを請け負っており、参加したB社メンバはそれら業務を実際に担当している。
(※障害者の雇用に特別な配慮をし、障害者の雇用の促進等に関する法律第44条の規定により、一定の要件を満たした上で厚生労働大臣の認可を受けて、障害者雇用率の算定において親会社の一事業所と見なされる子会社のこと)
【ワークショップの内容】
ワーク1:名刺交換をしながらの自己紹介。B社はA社の名刺作成を請け負っているが、A社社員はそのことを知らなかったため。それを知ってもらうという意味もある。B社社員は普段は名刺交換をする機会がないため、 A社社員に名刺の渡し方、置き方を教えてもらっていた。名刺を渡すときの話についても興味深く聞いていた。
ワーク2:自分の仕事の紹介
あらかじめ用意した資料や道具などを使いながら、お互いに自分の仕事を説明するワーク。お互い相手の会社の仕事の経験がないからか、たくさんの質問のやり取りがおきた。
ワーク3:レゴを使ったワーク
A社社員とB社社員がペアになり、2人で1つのレゴの作品を作る。
作品のお題は「未来の会社」。20分間での創作のあと、作品展示会を実施。二人のうちどちらかが残って自分たちの作品の説明、もう一人は自由に他のペアの作品を見回る。(途中で役割交代)
【参加者の感想】
〇A社社員の感想
・あいまいな返事をするとわかってもらえなかった。明確なお願いが大事。
・気を使いすぎないことが大事。
・B社社員は自分の仕事にプライドを持っていた。襟を正される思いがした。
・最初は、B社社員のことを、「あれができないだろう、これができないだろう」と先入観を持っていた。実際接してみると先入観が間違っていることが分かった。レゴのワークでは自分より発想がすごいぐらい。先入観を持ちすぎないことの大切さがわかった
〇B社社員の感想
・最初はとても緊張したが、暖かく迎えてもらえたおかげでだんだん楽しくなってきた。
・仕事の説明について、うまく説明できるか心配だったが、質問をいろいろとしてもらえたのでうまく説明できた。
・機会があればぜひもう一度参加したい。A社の仕事がどのような仕事が分かったのでよかった。
【関係者(上司、役員、とりまとめ担当など)の感想】
・私は、「障がいを持っている」という言い方は好きではない。障がい者は別に好きで障がいを手に入れたわけではないからだ。「障がいがある」または、障がいという言葉すら不要ではないかと思う。そのように考えて今後もA社とB社間で交流をしてほしい 。
・障がい者といっても、様々な種類や段階があり、それぞれに接し方を変える必要がある。それと同じように、A社の皆さんは上司や部下、お客様とどう接したらよいかを考えてみるのも良いかもしれない。
・障がいとは個性のことではないか。自分たちの身の回りにはさまざまな個性のある方がいる。その個性をきちんととらえているのかどうかもう一度考えてみるよい機会ではないか。
・自分はB社の育成担当で、ここにいるB社社員の採用からずっといままで社員を見てきた。最初は何もできなかったB社社員が、ここにいる頭のいいA社社員と対等に話をして、レゴを一緒に作っているのを見ると胸が熱くなった。

私はワークショップ全体の司会進行を担当しました。予想以上に盛り上がり、楽しいワークとなりました。意外だったのは、レゴを作るワークの時です。
A社社員とB社社員がペアになったことにより、もちろん仲良くなったのですが、一番仲良くなったのは、レゴを作っている時ではなく、作り終わった後、自分たちの作品を他の人にどのように説明しようか、という相談タイムの時でした。
最初は1分ほどで相談してもらう予定でしたが、あまりにも話が盛り上がっているので5分ほど時間をとったぐらいです。
これまで、ワークショップを企画するときには、グループ発表のための準備時間は、取らないか、グループワークの中に入れ込んでしまうことが多いのですが、今回のように一生懸命作った作品や検討内容を他に発表するときは、その準備時間についても丁寧に取り扱う必要があるのだなと思いました。
 
他にも、気づきがありました。
 
実はリハーサルの時、レゴのワークはペアではなく一人ずつのワークでした。というのは、ペアでやると難しいだろう、B社社員とコミュニケーションがうまく取れずワークがグダグダになってしまうだろう、という先入観があったからです。しかし実際リハーサルをしてみるとあっけないぐらい会話が成立してしまいました。そこで本番ではペアで行うことにしたのですが、ペアで行っても全く問題ありませんでした。
自分は障がい者にかなりの先入観をもっていたのだなと気づかされました。
さらに、参加者も言っていたのですが、このように障がい者と接するときには相手に対し配慮しすぎるぐらいの配慮ができるにもかかわらず、日ごろの職場や家庭では配慮が少なくなってしまうのはなぜだろう、という問いも見つけることもできました。
障がい者と一緒にワークショップを行うのは、最初はいろいろと心配してしまうと思いますが、実際やってみると案外うまくいくものです。いろいろな気づきもたくさん得られるワークショップになりますので、ぜひ皆さんも一度開催してみてはいかがでしょうか。
 
今年もどうぞよろしくお願いいたします。