最終回で削った部分をアレンジしてみました。
アニ視点で書いてます。
【アニの夢】
あたしはアニ。
典医寺で盗人の疑いをかけられてチェ家に居候していたけど、無事疑いが晴れてまた典医寺へ戻ってきた。
『いいの?
戻りたくなかったら、うちでスミさんの手伝いをしてくれてもいいのよ?』
医仙様からはそんな有難い話を頂いてすごく迷ったけど、あたしは典医寺に戻ることに決めた。
別に侍医様とオム医員様から謝って貰ったからじゃない。
そんなことよりも、やりたいことが出来たからだ。
そして以前と同じように、掃除や洗濯そして雑用と、慌ただしい毎日を送っている。
「アニ、ちょっとこの洗濯物頼むよ」
「こっちもついでにお願い」
重宝されているのか、こき使われているのかわからないけど、下っ端のあたしはとにかく忙しい。
山盛りの洗濯物が入った籠を抱え、急いで洗い場の方へ向かう。
(やっぱり医仙さまのお屋敷にいた方がよかったかな…)
たった数日いただけだけど、チェ家は桃源郷みたいにいいところだ。
料理上手なスミさんに、お兄ちゃんみたいなテマンさん。
大護軍様は鬼だなんて言われていて、怖くて近寄りがたかったけど、屋敷にいる時は王宮で見る時と全然違っていて優しそうだった。
スミさんが言うには、大護軍様は医仙様に骨抜きにされたらしい。
骨抜き…?
つまり医仙様の手にかかれば、臓腑だけじゃなく骨だって思い通りってことだろうか。
やっぱり医仙様の手ってすごすぎる…。
それから、ボンドも!
あの時の白猫がまさか医仙様のところにいたなんて驚いた。
抱っこできないのが残念だけど、可愛くて見てるだけでも癒される。
ああ、なんだかホランイに会いたくなっちゃったな…。
「アニ」
突然声をかけられてあたしは振り向いた。
典医寺がどれだけ騒がしくても、涼やかなその声だけは絶対聞き逃さない。
「医仙さま」
白い医官服を翻し、笑顔で近づいてくるあたしの憧れの人。
綺麗で優しくて、賢くて、そして強い。
医仙さまのいるところは、そこだけ光が集まっているかのように輝いている。
「処置の助手をお願い……あら、忙しかった?」
「大丈夫です!すぐ終わらせて行きます!」
大変だ、急がなきゃ。
あたしは大急ぎで洗い場へ向かうと、猛烈な勢いで大量の洗濯物を洗って干し、また医仙様の元へ向かう。
あたしの夢はいつか医仙様のように、人の役に立つ医女になること。
そして医仙様の役に立つこと。
だからもっともっと勉強しなきゃと思っている。
典医寺に戻ったのは、そのためだ。
「そう言えば、スミさんもボンドも寂しがってたわよ。
また遊びに来てあげてね」
「本当ですか?!ありがとうございます!」
あたしは嬉しくて飛び上がった。
何度も辛い思いをしたけれど、今はそれ以上の幸せを味わっている。
これも全部医仙様のおかげだ。
(いつか、恩返しをしたいな…)
まだ雑用ばかりで、一体どれくらいかかるかわからないけれど、きっと大丈夫。
だって医仙様がいつも言っているから。
強く願えば必ず叶うのよ、って。
だからあたしは夢を叶えるために頑張るんだ。
【アニの夢】終
〜あとがき〜
読んで下さった皆さま、本当にありがとうございました
覚えている方も、ちらほらいらして下さっているようですが、元々の【失せ物】はソク侍医が胆石症になる話でした。
何故変わったか。
…何故変わったか?
もうちょっと謎解き要素が欲しくなったから…だと思います
それから、どうでもいい話なのですが、せっかくなのでお付き合いください。
タバコについての設定…っていうか、言い訳です。
疑問に思われた方もおられるかもしれませんが、タバコが世界に普及するのはもっとずっと後の時代の話です。
元々タバコの葉はアメリカ大陸原産で、その歴史は古代マヤ文明まで遡るそう。
世界に広まるきっかけは、コロンブスがアメリカ大陸を発見した時に持ち帰ったことから、というのが歴史上の事実となっているようです。
だけどそうなると高麗はコロンブスより前の時代ですので、当然タバコはまだ入ってきていませんね。
まじか、それは困った
と、一瞬思ったのですが、どうしてもこのネタを使いたくて、私調べました。
すると、コロンブスがアメリカ大陸を発見する数百年ほど前に、すでにヴァイキングがアメリカ大陸に到達していたらしいのです。
そこで、こんな仮説を。
その時に、タバコを持ちかえったヴァイキングも中には居たんじゃないか。
タバコの魅力にとりつかれ、ひっそりどこかで栽培した人もいるんじゃないか。
タバコっていうのは中毒性のある葉ですし、人を虜にするものでしょう?
(私は一度も味わったことないのですが…)
そして限られた人たちの間で、秘匿されながらも脈々と受け継がれ、超貴重な薬草として知る人ぞ知る存在になっていた…。
こんな風に勝手に想像していました。
ありそう?な気がしません?
その後はお話にある通り。
世界中の薬草に精通していたヤンサが、キ・チョルのためにそれを手に入れさせたものの、肝心の買い手がいなくなり、宙に浮いた在庫が出回っていたわけです。
さて…
次はどうしようかな。
事件簿ですが、たわいのない話はカットしようと思っているのですが、これだけは戻してほしい、っていうのはありますか?
あれば戻すので言ってくださいね。
実は近頃仕事がとても忙しくなって、全く余裕がなくなる時があります。
事務的なこと、決めないといけないことなどで頭がいっぱいだと、ネタや文章も浮かばなくて更新の間が空いたりしてしまいます。
やる気がなくなってる訳ではないし、書きたいものもまだあるのですが…。
こんな状態で、今後も更新には波があるとは思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
皆さんのお声がカンフル剤になるので、お暇な時にまた気軽に声をかけてくださると嬉しいです。
ではではまた。
くぅ