ウンスの診療事件簿 16【幽霊編⑦】 | 壺中之天地 ~ シンイの世界にて

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韓国ドラマ【信義】の二次小説を書いています

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一時辰(約二時間)ほど遅れてヨンが文具屋へ到着した時、丁度診察を終えたウンスが奥から出てくるところだった。

無駄に長くなりそうな主人の挨拶を軽くいなし、ヨンはウンスに声をかけた。

 

「どうです」

 

「今から説明するところよ。

ご主人も座ってくれる?」

 

ウンスに促され、文具屋の主人も遠慮がちに座った。

 

「結論から言うと、お母様は痴呆ではないわ…もちろん先は分からないけど」

 

「痴呆ではない…?!

まことでございますか!」

 

母が痴呆ではないと聞いて、胸を撫で下ろす文具屋の主人。

だがすぐにまた不安げな表情に変わった。

 

「では、本当に幽霊が…? 」

 

「残念だけど、私はそっちの専門家じゃないから、見えているものが何かは分からないわ。

だけど私はシャルル・ボネ症候群という病気を疑ってるの」

 

「しゃるる…それはどのようなもので」

 

「目が見えなくなると脳が補おうとして、無いものを見せることがあるの。

分かりやすく言うと…そうね。

夢って眠っていて目で見てるわけじゃないのに、情景が見えるでしょう?

あれと同じことが、起きている時にも起きる…って言えばわかりやすいかしら。

目が見えなくなった人にそういう症状が起こることがあるのよ」

 

「そのような病気があるのですか…。

では母はこのままどうすれば良いのでしょう」

 

「その症状自体は、数ヶ月~1年程で自然に収まることが多いの。

目の血流を良くするお薬を後で届けるから、少し様子見、ってところね。

お母様には、痴呆ではないことは伝えてあるけど、病気のことは伝えてないの。

この病気はあまり否定したり不安に思わせないことが大事だから」

 

「そうですか……お恥ずかしい事に、私は散々母を責めてしまいました」

 

「仕方ないわよ。

お母様を心配してのことだもの。

お母様には、あまり見すぎると疲れて頭にも身体に良くないから、お薬飲んで気楽に過ごして、って言ってあるわ」

 

実際、ウンニョの脈には気の乱れが現れていた。

色々とストレスがかかっているのだろう。

 

「分かりました。

では皆にもそう言うようにして、この騒動を収めることにします」

 

「そうね。

でも痴呆じゃないって分かって、お母様も安心されたみたいよ。

ご自分でも不安に思われてたのね」

 

「医仙様、大護軍様、何とお礼を申し上げて良いか…本当にありがとうございます」

 

文具屋の主人は、何度も二人に頭を下げた。

また、様子を見に来ると約束して、ウンスとヨンは文具屋を後にする。

 

 

「イムジャ、折角なのでマンボの店でも寄って帰りましょう」

 

ちょうど時刻は夕餉時、至るところからいい匂いが漂い始めている。

ウンスも腹が減ったはずだ。

 

「ほんと?行きたい!

でもスミさんに言ってこなかったわ」

 

「先程テマンに言伝てておきました」

 

「さっすが、気が利くぅ!

じゃあこのままデートしましょ!」

 

ヨンの腕にウンスが手を絡める。

二人きりで出かけることを、でえと、と言うらしい。

妻のご機嫌な様子に、ヨンは口元を綻ばせた。

 

 

 

「いらっしゃい!

あれ、今日は二人連れ立って、珍しいね」

 

いつも元気なマンボ姐が二人を出迎える。

 

「マンボ姐さん、お酒とつまみをお願い!もちろんクッパもね」

 

「あいよ、ちょっと待ちな!」

 

早速酒と美味しそうな御菜が何品も卓の上に並んでいく。

 

「おや、ヨンと天女じゃねぇか」

 

そこへマンボもやって来て、二人の前に座った。

 

「今日はあの霊能婆さんの所へ行ってきたんだろ?」

 

「ええそうなの、よく知ってるわね」

 

「そりゃそれが商売だからな。

で、どうだったい?

やっぱり本物だったかい?

それとも痴呆かい?」

 

「痴呆ではないことは確かよ。

それに多分、霊能者でもないと思う」

 

「へぇ、なんで分かるんだ?」

 

「あのお婆さん、私の後ろに母が立ってるって言ったの」

 

「あんたのおっ母さんが?」

 

マンボ兄妹と、ヨンも驚いて目を見開いた。

 

「ええ。おかしいわよね。

だって私のお母さん、まだ死んでないし。ずっと未来の人よ」

 

「たしかに」

 

「凄く具体的な説明をしてくれたの。背格好から、来ている着物まで。髪に蝶々を形どった銀色の簪を挿してる、なんてことまで。

だけど有り得ないの。だって、ヨンは知ってるでしょ?

天界でこんな格好してる人なんていないって」

 

「ええ」

 

ヨンなら分かる。実際天界を見たからだ。

だが、あの老婆は、ウンスがずっと先の世から来たのだと知らない。

 

「つまり、死者を見ている訳ではなく、ただ幻を見ている、という訳か…」

 

「そういうことだと思うわ」

 

ウンスは頷いた。

 

 

 

注意作中に、プラバシーポリシーに反する部分が含まれますが、時代を考慮して、おおらかに読んで頂けると幸いです

 

 

 

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