「あのぉ…誰かいませんか〜…?
怪しい者じゃないのよ…
何かの間違いで、決して不法侵入とかじゃないですから〜」
恐る恐るベッドルームを出て、続くリビングを覗く。
ウンスの夜着は高麗のままで、場違い感半端ない。
女性の部屋のようだ。
それも一人暮らしっぽい。
テーブルの上には、開いたビール缶だけがぽつんと残されている。
誰の部屋か分からないが、ウンス以外誰もいないようだ。
リビングに写真が飾ってあるのを見つける。
「うそ……これ、私?……と…まさか」
そこには、ウンスと同じ顔の女性が、男性と立っている。
かなり親密に寄り添っていて、彼氏もしくは婚約者であることは間違いないだろう。
だが、驚いたのはその男性の顔がヨンとそっくりだったことだ。
プルプル〜電話だよ〜♪
プルプル〜電話だよ〜♪
「ひやぁっ!」
ベッドルームから音が聞こえてきてウンスは飛び上がった。
スマホが踊っている。
画面を見ると…
【完璧なボス】と出ていた。
……仕事関係かしら……
(どうしよう、出るべき?無視するべき?)
ブルブル震えながらけたたましくなり続けるスマホを眺めるウンス。
そのうちぴたりと止まった。
(止まった…でもボスなんでしょ、仕事は大丈夫なのかしら……?)
ほっと一息つくものの、妙に心配にもなる。
スマホを手に取って見ると、ウンスのいた時より新しいモデルだ。
そのスマホが再び鳴り出した。
またもや【完璧なボス】だ。
「はいっ」
今度はつい条件反射で出てしまった。
悲しいかな、未だ下積み時代の頃の癖が染み付いていたようだ。ボスという言葉に弱い。
「すみません!」
何がすみません、なのか分からないが、上司が何度もかけてくるなんて大体がロクな事じゃない。
そう思ったのだが……
『ごめん!ウンス!』
「……?」
『ウンス…?どうしたんだ?何かあったのか?』
想像していたのとは違う、親しげな声が聞こえてきた。
(あれ?)
何かおかしい。もしかして上司ではない…?
それに今、ウンスって…
ウンスの心臓が早鐘を打った。
この声…電話で少しくぐもってはいるし、言葉遣いも全然違うけど……
頭の中で、まさか、まさか、という思いがぐるぐる回る。
『ウンス?具合でも悪いのか?
待ってろ、すぐに行ってやる!』
その時、電話の向こうで女性の声が聞こえてきた。
『ヨン!何を言ってるんだ!今から大事な商談だろうが』
『叔母上!ウンスが具合悪いんだ、明日に変えてもらってくれ』
『馬鹿者!ヨン、お前何言ってる…』
げほっ!
ウンスはいつの間にか止めていた息を一気に吸い込んだせいで咽せそうになった。
やっぱり…!
今、ヨン、って言ったわよね?ヨンって……!
スマホを持ったまま、さっきの写真の前に行く。
ヨンとウンス……
写真の中の男女を見つめる。
ただ似ているだけじゃない。
この二人はヨンとウンスだ。
私たちじゃない、私たちがいる世界。
そして私とここのウンスが、チェンジリングされてしまった…。
『バグ…別の世界…上手くなりきって……』
さっきのくぅの言葉を思い出す。
「なるほどね…うっすらだけど、理解した」
「ウンス?本当に大丈夫か?」
「うん、大丈夫。
ちょっと寝惚けてただけ…
バッチリ、頭冴えてきたわ!」
「じゃ、今夜仕事終わり次第、そっちに行くから!」
「……へっ?」
「ウンスの好きなタルト買っていくから、機嫌直して待っててくれ」
そう言って、ヨンは電話を切ってしまった。
【完璧なボス】って登録してたの、
初めて知りました……
ヨンが「ごめん」と言った理由、
分かっておられますよね〜?
そこ重要です……思い出してね
やっと状況を把握したウンス
数多の事件により鍛えられた考察力?と肝っ玉で、
この一日を上手く乗り切れるのか……
はたまた大失敗に終わるのか…
実は、私達、まだ全部書いておりません
これからの更新は、
書き上げるまで、一日ずつ交互になると思います
今月中には終了する予定
どうぞよろしくお願いしま〜す
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