地震は正しく怖れる!!
朝日新聞デジタル
記事2012年12月22日03時00分
関東、震災で確率上昇 水戸は倍に
地震動予測地図
30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率(%)
原子力施設で30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率(%)
東日本大震災の余震、首都直下、南海トラフ……。いくつもの地震が懸念されるなか、政府が21日に公表した地震動予測地図では、各地の都市や原発の地震発生確率が軒並み上がった。高まる「災害リスク」への対応のあり方が問われている。
「東日本大震災で建物が弱っているだろう。再び大きな地震が起きたらどうなってしまうのか」。水戸市内の消防団で分団長を務める大高進さん(62)は21日に公表された地震発生確率を受け、こう心配する。
水戸市は市本庁舎がある中心部で「30年以内に震度6弱以上」の地震が起きる確率が62.3%と、2年前の31.3%の2倍に。東日本大震災の余震が続いていることが背景にある。
震災では震度6弱の揺れを受けて電話が使えず、集まれた団員はわずか。震度5強以上の場合は必ず出動することに改めたが、大高さんは「地震は想定外のことが起こりすぎる。マニュアル通りに動けるのかわからない」と話した。
市役所本庁舎は被災して今も使えない。市は現在地で建て替える方針だが、軟弱な地盤を理由に市議会で反対論もある。今回の発生確率だけでみれば庁舎を市郊外に造らざるを得なくなるといい、高橋靖市長は「数字に左右されたら現実的な街づくりはできない」と懸念する。
水戸市から約20キロ離れた日本原子力発電東海第二原発(停止中)も33.4%から67.5%になった。茨城県は来春までに地域防災計画を見直す予定だが、発生確率の上昇が作業に影響を与えるのは必至。茨城県原子力安全対策課の横山公亮課長補佐は「複合災害に備えた対策がより重要になる」と気を引き締める。
11.9ポイント増の75.7%と全国で3番目に高くなった千葉市。千葉県は震災後に防災計画を見直したが、想定の指標は房総沖地震など特定の震源と規模で、発生確率は考慮していない。県の担当者は「確率が高まっているのであれば詳細をみて対応したい」。首都直下地震が懸念される東京都庁も23.2%に上がった。
2010年時点の発生確率が0.9%だったにもかかわらず、震災に見舞われた福島市。
今回の公表で3.0%に上がったほか、東京電力福島第二原発も40.6%に上昇したが、福島県災害対策課の担当者は「今さら確率が上がったと言われても何の意味があるのか。震災の経験を踏まえ、巨大地震が再び起きることを前提にして対策に取り組んでいる」と冷静に受け止める。
◇
〈地域防災計画〉 都道府県や市町村が災害対策本部の設置や情報の伝達、避難のあり方などを定めた計画。自治体の災害対応の根幹となるもので、災害対策基本法で作成が義務づけられている。国の防災基本計画の内容を反映しながら、地震や津波、風水害、原発事故など必要に応じて策定・修正する。東日本大震災後は多くの自治体が大津波や原発事故に重点を置いて計画を見直している。
■日頃の備え、積み重ねて
〈国の中央防災会議委員の阿部勝征・東京大名誉教授(地震学)の話〉 日本列島はどこでも地震が起きる可能性があり、地元の発生確率が低くても安心してはいけない。ただ、今回の確率はあくまでも起こりやすさの目安。過剰に受け止めず「正しく恐れる」ことが大切だ。寝室や居間など家族が長く滞在する部屋の家具の固定や建物の耐震補強といった備えを日ごろから積み重ねてほしい。
記事2012年12月22日03時00分
関東、震災で確率上昇 水戸は倍に
地震動予測地図
30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率(%)
原子力施設で30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率(%)
東日本大震災の余震、首都直下、南海トラフ……。いくつもの地震が懸念されるなか、政府が21日に公表した地震動予測地図では、各地の都市や原発の地震発生確率が軒並み上がった。高まる「災害リスク」への対応のあり方が問われている。
「東日本大震災で建物が弱っているだろう。再び大きな地震が起きたらどうなってしまうのか」。水戸市内の消防団で分団長を務める大高進さん(62)は21日に公表された地震発生確率を受け、こう心配する。
水戸市は市本庁舎がある中心部で「30年以内に震度6弱以上」の地震が起きる確率が62.3%と、2年前の31.3%の2倍に。東日本大震災の余震が続いていることが背景にある。
震災では震度6弱の揺れを受けて電話が使えず、集まれた団員はわずか。震度5強以上の場合は必ず出動することに改めたが、大高さんは「地震は想定外のことが起こりすぎる。マニュアル通りに動けるのかわからない」と話した。
市役所本庁舎は被災して今も使えない。市は現在地で建て替える方針だが、軟弱な地盤を理由に市議会で反対論もある。今回の発生確率だけでみれば庁舎を市郊外に造らざるを得なくなるといい、高橋靖市長は「数字に左右されたら現実的な街づくりはできない」と懸念する。
水戸市から約20キロ離れた日本原子力発電東海第二原発(停止中)も33.4%から67.5%になった。茨城県は来春までに地域防災計画を見直す予定だが、発生確率の上昇が作業に影響を与えるのは必至。茨城県原子力安全対策課の横山公亮課長補佐は「複合災害に備えた対策がより重要になる」と気を引き締める。
11.9ポイント増の75.7%と全国で3番目に高くなった千葉市。千葉県は震災後に防災計画を見直したが、想定の指標は房総沖地震など特定の震源と規模で、発生確率は考慮していない。県の担当者は「確率が高まっているのであれば詳細をみて対応したい」。首都直下地震が懸念される東京都庁も23.2%に上がった。
2010年時点の発生確率が0.9%だったにもかかわらず、震災に見舞われた福島市。
今回の公表で3.0%に上がったほか、東京電力福島第二原発も40.6%に上昇したが、福島県災害対策課の担当者は「今さら確率が上がったと言われても何の意味があるのか。震災の経験を踏まえ、巨大地震が再び起きることを前提にして対策に取り組んでいる」と冷静に受け止める。
◇
〈地域防災計画〉 都道府県や市町村が災害対策本部の設置や情報の伝達、避難のあり方などを定めた計画。自治体の災害対応の根幹となるもので、災害対策基本法で作成が義務づけられている。国の防災基本計画の内容を反映しながら、地震や津波、風水害、原発事故など必要に応じて策定・修正する。東日本大震災後は多くの自治体が大津波や原発事故に重点を置いて計画を見直している。
■日頃の備え、積み重ねて
〈国の中央防災会議委員の阿部勝征・東京大名誉教授(地震学)の話〉 日本列島はどこでも地震が起きる可能性があり、地元の発生確率が低くても安心してはいけない。ただ、今回の確率はあくまでも起こりやすさの目安。過剰に受け止めず「正しく恐れる」ことが大切だ。寝室や居間など家族が長く滞在する部屋の家具の固定や建物の耐震補強といった備えを日ごろから積み重ねてほしい。