「原発や基地、押しつけてきた」 | あなたの心に届ける詞

「原発や基地、押しつけてきた」


「原発や基地、押しつけてきた」〈限界にっぽん〉
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 「墜落したら誰が責任をとるのか」。米軍の新型輸送機オスプレイ配備が迫る9月30日、沖縄県宜野湾市の普天間飛行場前で開かれた抗議集会。怒号が飛び交う会場に、福島県南相馬市から避難している大橋文之さん(54)が駆けつけた。

 「福島では原発を一部の人が受け入れて潤ったが、事故が起きたらみんな悲惨な目にあった。沖縄も全く同じ。事故が起きる前に何とかしないとと思って」
 「普天間返還」後の基地の移設候補地になっている名護市辺野古。米軍基地「キャンプシュワブ」わきで続く「建設反対」の座り込みテント村に、福島県須賀川市から来た佐藤泰子さん(63)がいた。
「政府は、原発がないと日本経済はもたないと言い、安全保障のためには米軍基地が必要だと言って、国策として弱い地域にいやなものを押しつけてきた。沖縄に来て二つがつながった」
 今も福島から約700人が避難する沖縄。避難者たちが改めて感じるのは、金を出せば事足れりと、基地や原発の根本にある問題の解決を先送りしてきた政府へのいらだちと不信だ。
 キャンプシュワブの敷地を区切る金網には、全国からテント村に届いた寄せ書きや旗が数十枚張られていた。「沖縄と福島、離れていても想いは一つ」「福島も放射能と闘います」

■「地域の自立を阻む」
 経済的な利益で過疎地などに原発や基地を誘導する象徴が、米軍を受け入れる自治体に配られる「米軍再編交付金」(米軍再編関係経費のひとつ)だ。
 施設の種類や面積、軍人の数で点数(1点あたり29.2億円)をつけ、計画決定時にまず交付金総額の10%が払われ、その後も工事開始から移設終了まで段階的に支払われる。
 「エネ庁(資源エネルギー庁)さんの制度を参考にさせてもらった」と防衛省の担当者は言う。モデルは、原発の立地を進めるために配られる「電源立地地域対策交付金」だ。
 自治体が幅広く使えるようにしたのも、原発と同じ。「施設の維持費や人件費、医療費無料化などソフト面にも使える。使い勝手がずっとよくなったはず」と防衛省担当者。この「新しいアメ」の交付対象施設も沖縄県が全国で一番多い。
 沖縄県中部の宜野座村のリゾート施設を思わせる「かんなタラソ沖縄」。海水を使った美容や健康づくりを売り物に2003年に開業したが、運営する村の公社は巨額の累積赤字を抱える。それでも事業が続けられるのは、交付金などの支えがあるからだ。
 米軍再編交付金をもらえなくなった自治体もある。

 名護市では、市長選で稲嶺進氏が「基地受け入れ反対」を掲げて当選し、交付金が止まった。市では、交付金を当て込んで計画された35事業の半分をとりやめたり、保留したりした。「必要な事業は他の補助制度でやれたし、交付金で水膨れした財政を見直すきっかけになった」と仲村善幸市議は話す。
 稲嶺市長は「交付金が出るのは10年間。それで基地を受け入れたら、それこそ100年も基地を引きずっていく。原発を受け入れた自治体が、その後次々と原発の増設をのまざるをえなくなるのと同じになる。基地や原発は、自立しようとする経済の足を引っ張る存在だということが住民もわかっている」。

 米軍住宅の跡地を再開発した「那覇新都心」は、大型ショッピングセンターなどの売り上げだけでも年608億円にのぼる盛況だ。一方、新都心の2倍以上の面積を占有する普天間飛行場からは10分の1の66億円の賃借料しか入らない。基地がもたらす恩恵よりも、地域経済の自立をはばむ弊害の方が大きい。「基地や原発での振興は限界にきているのに、政府は相変わらずだ」と稲嶺市長は言う。

■変われない霞が関
 原発の危険を過疎地に負わせて、「便利な生活」を享受してきた社会のあり方を変えようと、政府は「2030年代に原発ゼロ」をめざす「革新的エネルギー・環境戦略」をまとめた。だがその一方で、原発で出る使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル事業」の継続をうたい、「原発ゼロ」を閣議ではっきり決めずに、将来見直す可能性まで示すなど迷走した。

 「党の議論は突破したが、『青森』と『日米』の二つの問題をリアルな壁として越えられなかった」。「原発ゼロ」で動いた民主党の辻元清美議員は言う。
 「原発ゼロ」にブレーキがかかったのは8月下旬、電気事業連合会が原発推進議員らに配った「ペーパー」が引き金だった。
 「原子力ゼロの課題」と題した資料には、青森の問題や、日米など国際関係への影響を訴えていた。
 「原発ゼロ」にするなら、核燃料サイクル事業を続ける必要はなくなり、国策としてこの事業への「協力」を求めてきた青森県のはしごをはずすことになる。日米関係の面でも、日本が原発をやめれば核の不拡散体制は不安定化し、日本と提携する米国の原発産業も影響を受ける――。
 このペーパーが出た直後、示しあわせたように経済産業省や米国の知日派、経済界から「原発ゼロ」への反発が噴き出した。


 政府部内では水面下で青森県に「核燃事業中止」を打診していたが、はね返された。事業をやめるとなると、使用済み核燃料などを埋めて捨てる最終処分場を確保しなければいけない。「青森県は最終処分場を押しつけられるのを恐れたし、他の自治体もこれまでのように知らん顔をできなくなる。この問題で解が描けなかった」(政府関係者)という。
 これに対し、福山哲郎参院議員は「霞が関が『原発ゼロ』にするのが嫌だから処分場や核燃事業に代わる地域振興策の答えを出すのをさぼった」と批判する。
 政府は、政策の誤りを認めることになる「核燃事業中止」を青森県が反発しているせいにして見送り、米国とぎくしゃくすることも避ける空気だった。産業界は原発建設での甘い蜜を捨てられなかった。「旧来の政策のもとで利害を共通にしてきた既得権益層の岩盤の厚さを改めて痛感した」と辻元議員は振り返る。
 「決められない政府」のもとで、「変われない日本」が繰り返される。あおりを食うのは、どんなに反対の声をあげても原発や基地を押しつけられ続ける自治体に住む人たちだ。(編集委員・西井泰之)
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いつまで続く 変わる決意をしない政府!!

国民の声を聞けば 気持ちはわかるだろうに!!

お金をばらまき 地方に押し付け 自分たちは 復興費を横取りし 良いとこ取り