健康のための都市デザインの活用 – スペイン・バルセロナ

 

2016年、バルセロナは初めて Superilla(スペリージャ)を導入して新たなスタートを切った。このスペリージャとは、この地方独特の都市デザイン政策で、その中心に市民とコミュニティを据えることにより公共スペースを整備し直そうとするものである。まず公共スペースは歩行者を最優先に考え、次に自転車と公共交通機関がこれに続く。目的は車両からの大気汚染、騒音を減らし、市民が集まり、会話をし、体を動かし、さまざまな活動に参加するための、より開放的な緑の空間を作り出すことだ。

1つのスペリージャ(スーパーブロック)では自動車は9ブロック以内の居住者のみに限定され、それ以外の自動車は主要道路しか通行できない。これにより多くの道路が歩行者と自転車に開放されるのである。数年の間に、この取り組みは3つの形で周囲の都市部に浸透していった。

1.       基礎政策:道路の方向を変えたり自動車の通航制限、および駐車制限など、小さな機能的変化を中心に行う。

2.       戦略的政策:あまり経費をかけずに行う一時的な変化で、道路の上の塗装や新しくベンチやプランターを設置する。

3.       構造的変化:道路やその他建造物などのより永久劇な変化。

 バルセロナのスペリージャ構想は1980年代から存在し、ていた。1880年代、サルバドール・ルエダにより提唱されたものの、あまりに進歩的だと思われて十分な支持を得るのが困難だった。しかし2016年5月、行政の決定(”Omplim de vida els carrers”)により、スペリージャはついに実践するために十分な支持を得られることになった。まずは試験的に、市内のあちこちにいくつかのスーパーブロックを作ってみようということだった。

 2021年9月、健康都市連携機関(Partnership for Healthy Cities)の協力により公衆衛生局(Public Health Agency: ASPB)が提出した報告書によると、スペリージャ・プロジェクトは十分な費用対効果を得られたと結論づけられた。’Salut als Carers’ project (Health in the Streets) は3つのスーパーブロックについて市民の健康と環境について調査を行った。ASPBは最後の3年間、サンアントニオ、ポブレノウ、オルタの住民について、健康状態や身体活動、新しく作られた公共スペースのコミュニティ利用を調査した。環境に関する効果を調べるために大気の状態も調べられた。

 調査結果では、サンアントニオ市場周辺のスーパーブロックで大気汚染が改善し、NO2が25%、PM10粒子が17%減少していた。いずれも人間の健康を害することで知られている汚染物質である。オルタ周辺のスーパーブロックでは60%以上の住民が、ブロック内の小道を歩くことがより快適になり、ベビーカーや身体に障害を持つ人たちの道路の利用が簡便になったと答えた。ポブレノウのスーパーブロックでは騒音公害が改善し、住民たちは精神的な苦痛から解放された。こうした政策がさらに市内で拡大していけば、バルセロナ・スペリージャにより毎年700人の人が健康上の恩恵を受け、死を逃れることができるものと試算された。

 調査の対象となったスーパーブロックの住民と労働者は、健康な状態を示す“ウェル・ビーイング”という概念を知ったこと、静寂と質の良い睡眠、騒音と大気汚染の改善、さらには社会的交流の増加などを報告にあげた。こうして、スペリージャによって新しく作られた環境によって、明らかに歩行者は通行しやすくなり、人々の身体活動の頻度も増えた。自動車の量が減ったことで、大気の質も大きく改善した。

 この調査結果は、今後公衆衛生分野において意思決定をするための大きな支えになるであろう。バルセロナが市民のために安全で健康的で持続性のある環境を作ろうとして施行したスペリージャは、効果が期待できる政策例であろう。

 

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私が今日本で提案しているのは

1.2か所を結ぶ2本以上の道路があれば1本は車両通行禁止にすること。

2.少なくとも小学生は一度も自動車と会うことなく通学できるよう、緑に富んだ通学路を確保すること。

 

とりあえず今年中にバルセロナ見てきます。