ふくろうと水棲疾病。
一見無関係なこの二つには、相関関係があると私どもは考えます。

上記画像は、イーゴリィ君が吐き出したペリットの記録です。
ふくろうやその他猛禽類等が丸飲みした食餌の難消化部分をまとめて吐き出すものをペリットというのですが、丸ごとの冷凍ヒヨコ/マウスを与えているにも関わらず、爪や嘴等の組織は綺麗に消化され、骨に至ってはまるで火葬したように骨髄が綺麗に消失しています。その上、ペリットに形成される過程で強力に脱水され、排出直後こそ若干潤ってはおりますが、すぐに乾燥し、まるで死後数年が経過したかのようにカラカラに乾いた骨類だけが残ります。
ふくろうの胃酸は、地球上生物の中でも最強に入る部類で、ピーク時にはPh0.4とも言われます。
(人間の胃酸はPh1~2前後です。体調が悪ければ、多く・薄くなるものです)
強い胃酸を持つ者の宿命として、彼らは空腹に極端に弱く、常に自らの胃酸が胃を焼き尽くさないよう、貪食し続ける必要に迫られます。
その大食っぷりは、どうしてこれほどの獲物を毎日捕食できるのだろう?と疑問に感じるほどです。
実際、ヨーロッパでは小型齧歯類の食害を防ぐ強力な番人として、倉庫や庭園、農園等にふくろうを飼育する伝統すらあります。
話を水棲疾病に戻します。
水棲疾病とは、水中をベースとする疾病であり、本来であれば自然水系から離れた所には出現しにくいものです。
ですが、多くはそれが発した源から遥かに離れた、私達のリビングルームや陸上の水槽に頻回で発生します。
感染経路には様々な研究がありますが、ただ一つだけ確かなことに、自然水系と何らかの手段で直接的/間接的を関わらず、接触がもたらされたところにそれは出現します。
多くは空気感染であり、飼育者様が外に出て帰宅するそのルート上で付着させた埃やチリ等から侵入するのですが、感染経路、という意味ではその埃やチリの源について考える必要があります。
自然水系由来の疾病を都市生活の埃やチリと結びつけてしまう媒介者は、小型のものであれば蚊やウンカ等の水中由来の羽虫類、水場と往来する鳥類、そして、野鼠類を始めとした小型齧歯類でもあります。
特に小型齧歯類は往来のルートとして下水等濡れた場所を好む性質があり、持ち込む病原菌の種類は膨大です。
単純に小型齧歯類の抑制を行うのであれば、猫を増やせば数自体は減ります。
しかし、猫の狩りは対象物の体液類を残存させてしまうことが多く、布団の中にネズミの死体を持ってきた、等、場合によれば感染経路や接触機会を増大させるものになりかねません。
その点、ふくろうは獲物を丸のみすることが多いので体液類の残存は少なく、その上火葬炉に等しいPh0.4の胃酸で焼灼し尽してくれます。狩りは気まぐれに行われるのではなく、生きる為に必然として行われ、ふくろうが生きている限り膨大な頭数が消費され、それらは腐敗源にならず、その場を汚染しません。
自然が健全性を失い、大型猛禽類が姿を消すと、水中と陸上を繋ぐ媒介者の生息数が暴発することが知られています。
それは単純に小型齧歯類の生息数が増える、というだけではなく、彼らが媒介する原虫類や菌類、菌糸類の爆発的増殖でもあり、目に見える形としては、樹木の立ち枯れや土質の悪化、農作物の不作等、更には伝染病のアウトブレイクでさえそれらが遠因であることも少なくはありません。
ふくろうは、いわば水中と陸上を遮断する境界神にも似た役目を果たしています。
水棲疾病を陸上に伝播させない為には、自然の潜在力を解明し、それらを自分達の知識と武器として活用することが重要です。
そんな理由でイーゴリィ君は今日もペリットを吐き、私達の研究に貢献してくれております。

お気に入りのぬいぐるみで遊ぶイーゴリィ君。ふくろうは結構「遊び」ます。

ただ乗っているだけではなく、がっしり握っています。
餌よりぬいぐるみが大切な事もあるようで、下手に取り上げると食事前でも気が散ります。
イーゴリィ君に御用の方は、一声仰って下さい。