もう長い間、実物を見ていないのに、思い浮かべると泣けて泣けて仕方がない「報道写真」がある。
1985年の日航機墜落事故。
残骸が散らばる山岳地形の中、消防団のおじさんが泣きながら傾斜地を踏みしめて登っている。
背中には生存者を背負っている。
凄惨な事故への怒り、救助が遅れた事への悔恨、生存者を見つけた歓喜。
歯を食いしばって泣いている。
チクショウ!チクショウ!チクショウ!
写真から、噛みしめた言葉が溢れ出すようだった。
人間は怒っても悔やんでも嬉しくても泣くのである。
遺品からは、事故発生から墜落までの時間に記された、乱れた文字の遺書がいくつか見つかっている。
妻と幼い息子を残して死んだ父親は、短い遺書の最後、大きな文字で
「○○(名前)、立派になれ」
と記していた。
人間に善意がないとどうして言えよう。
人の心には悪意がある。
でも、善意も必ずある。
この事故で、私の敬愛する歌手、坂本九さんが亡くなった。
九ちゃんは私の記憶の中で、ずっと「善い人」だった。
幼い記憶では、モノクロの画面の中で、チャリティー番組の司会をしていた。
人なつっこい笑顔で、身障者の方達との交流を楽しんでいた。
1976年(私が中学生の頃)から事故で亡くなるまで、
北海道で「サンデー九」という福祉情報番組の司会をしていた。
24時間TVでも北海道に登場した。
スタジオで「善い事やるぞ~!」と意気込む出演者達の中、
一人飄々と「いつものことをするだけ」という様子で自分の持ち場に消えていった。
「笑っていいとも」のテレホンショッキングに出演した時、チャリティ関係の仕事が多いという話題になり、
「ほんと、儲かんない仕事ばっかりで」
と爽やかに笑っていた。
「世の中には『善人』がいる」
物心ついてから九ちゃんが亡くなるまでの、九ちゃんの記憶を辿って、
私はそう確信する。
北海道の栗山町には『坂本九記念館』がある。
生前の愛用品が飾られ、九ちゃんの曲が静かに流れ、TVにはトーク番組などの録画が映されていた。
慎ましくて快い施設だった。
私の愛唱歌は
『見上げてごらん夜の星を』
♪見上げてごらん 夜の星を
小さな星の 小さな光が
ささやかな幸せを歌ってる
見上げてごらん 夜の星を
ボクらのように 名もない星が
ささやかな幸せを祈ってる ♪
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