「あなたが、とても、とても、好きです」
幼なじみで跳ねっ返りの由美が、ある日突然、そんな手紙を主人公(薫くん)に寄越す。
それまで散々生意気ぶりを発揮していた女の子(高校生)のこの手紙。
当時19才の私はキュンとした。
庄司薫さんの小説、薫くん四部作は私の青春期にリンクする。
この人、働かない作家。
薫くんシリーズは、一作目『赤頭巾ちゃん気をつけて』から完結編『ぼくの大好きな青髭』まで8年掛かった。
青髭が出た時は「今更かい!」と思った。
配偶者は中村紘子さん。当時有名な美人ピアニスト。彼自身もいいとこのボン。働かなくても食べていけたのだろう。
時代背景は安保闘争の直後。
庄司薫くん(作者のペンネームと同じ名前)は高校三年生。
混乱の年、東大入試は中止となる。
インテリでクールな薫くんは騒がない。
彼の先輩たちも理屈が立って醒めている。
その先輩の一人が言う。
「逃げて逃げて逃げまくれ」
そして
「どうしても逃げきれないことにぶつかったら、それが本当に大切なこと」
このセリフ、私の頭にポンっと入ってきた。
忘れられないセリフって、そういうもの。
縁だよね。
以来、行き詰まって参りそうになった時、この言葉を思い出す。
逃げちゃおう。
逃げ切れないほど大切なことなんて、大してないんだよ。
10年ほど前、ノイローゼで潰れた後輩がいた。
何てアドバイスするか一所懸命考えた。
でも、私の言葉は全く届かなかった。
他人のあんたにはわからない、と言われた。
所詮、ムリなんだよ。人にアドバイスすることなんか。
特に、頭の中が小さな世界観でいっぱいになってしまった人にはね。
今日も、体罰に悩んで自殺した高校生のニュースを見た。
行き詰まった彼に、もし私が何かを言ったとしても、所詮心に響かない。
でも、私はこの言葉に救われたよ
「逃げて逃げて逃げまくれ」
命を捨てるほど大切なことなんて、実は大してないんだよ。
↑これは青髭の単行本。
このシリーズを知った頃、前三作はすでに文庫本になっていた。
因みに冒頭の手紙が出てくるのは『白鳥の歌なんか聞こえない』
逃げまくれ~は『さらば怪傑黒頭巾』
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